長男が1歳児だった頃、私はどうすればいいのか、途方にくれていました。息子は本当にかわいくて天使のようだったけど、抱っこしないと泣く、授乳しないと泣く、とにかく一日中泣きまくる子で、とても外出などできません。子育て初心者だった私にアドバイスをくれる人もなく、実家の母は仕事で忙しいし、義母は遠い九州。頼りの夫は毎日午前様。なにより私が、第三者に子を預けるのがいやだったのです。
料理・洗濯・掃除だって、結婚前は親任せの生活。夜はテレビをゆっくり見て、本を読んで、お風呂に一時間かけて入る優雅な毎日。会社帰りに飲みに行くこともありました。冬はスキー、夏はダイビング。.....いくら母親になったからといっても、1年やそこらで人間、そう変われるものでもありません。覚悟してはいたものの、かわいい息子がいるのに私は毎日孤独でした。
その頃私は、5分単位でも暇ができると、懸賞に応募するのが唯一の楽しみでした。毎月はがきを30枚くらい使って応募すると、月に一個くらいは何か当たるのです。そして、長男が3歳になったころ、我が家に懸賞で当たった、Windows3.1パソコンと、ISDN回線がどーんと届いたのです。この日から私の人生は大きく変わっていったのでした。
私の名前で応募した懸賞で当たったから、私のパソコン!それがとてもうれしくて、使い方を必死で覚えました。不思議と、パソコン操作を覚えたいがために、家事も育児も要領よくなり、日に日にパソコンに向かえる時間が増えていきました。それは、10分単位の細切れの時間でしたが、短いからこそ集中して勉強できるのです。いつの間にか育児ストレスや孤独感は消えていました。そしてある日気がつくと、私は自分のホームページに、毎日日記を載せるようにまでなっていました。そしてそこを訪れた人が、私に「仕事」というチャンスをくださったのです。文章を書いてお金がもらえる。それは私にとって、思いもかけない職種でした。なにせ、文章を書くのは大の苦手だと思っていたから。
もちろん、稿料は微々たる物で、通信費を払ったらなくなってしまうくらいの仕事でしたが、自分の手で稼いだことがとてもうれしかった。最初の給与で夫にプレゼントを買いました。それまで夫の給与で夫にプレゼントを買うのがむなしかったので出産退職して以来初めてのことでした。夫はとてもほめてくれて、私はとてもうれしかった。パソコンのことを夫に習ったりして、夫婦の会話も増えました。
....それから10年。私の人生は大きく変わったけど、仕事を続けられることに心から感謝しています。仕事をするために育児や家事にたくさん工夫が必要だったけど、手を差し伸べてくれる人は専業主婦のときよりたくさんいました。子育ても楽しくなり、経済的にもゆとりができ、結果三人も子どもを産みました。
手に職もない、資格もない、学歴も職歴もごく普通の平凡な私が、細切れの時間をつないで得た仕事。まだまだ子育て真っ最中だから、独身時代のようにはいかないけれど、自分の時間ももてるようになり、孤独からも開放され、経済的にも自立できたのは、家族の理解と懸賞で当たったパソコンのおかげです。子育てしながら仕事したい、社会に出たいと願う強い意思があれば、今何もない人にもチャンスはめぐってきます。
今、仕事に限らずやりたいことを我慢していませんか?子育て中だからって、それをあきらめるのはもったいないことだと、私は思うのです。
京太さんのチャンスのはじまりは懸賞であたったパソコンだったとは!!懸賞おくった人もこれで絵文字師やデジタルライターが誕生するとは思ってなかったでしょうね。(笑)
それにしても人生って面白い。今コレというものがなくても動いているうちにみえてきたり、しますよね。やりたいこと自体ができなくてもまわりをウロチョロしてるとできるようになったり。 京太さんにできる、っていわれるとできるような気がしてくるから不思議。これからも楽しみにしています。