この「ないた あかおに」は、近代童話の創始者といわれる浜田廣介の”ひろすけ童話”の代表作。私も、子供の保育園のクリスマス会でこの本をもらって以来、毎日、毎日、寝る前に子供に強制的に読まされていました。(^^;
はじめは、「けっこう文字も多いし、もう口が疲れた・・。耐えられん・・。」と不満に思いながら、子供にせがまれるままに本を読み続けていたのですが、ある日、異変が!まだ幼い子供が、頁の挿し絵を見ただけで、字を読むより先に「ああ あおくん、きみは そんなに ぼくをおもってくれるのか。」とスラスラと諳(そら)んじはじめたのです。どの頁を見ても、かなりの部分を暗記しています。5、7、5調の耳ざわりのよい美しい日本語を使ったフレーズのせいか、自然と覚えてしまったようで、得意げに諳んじています・・・。
その様子を見て、はじめて「絵本ってすごい!」と思いました。昔、字がなかった頃は、親から子へとお話は語り伝えられてきたのでしょう。そして、印刷の技術が広まると、本という形で一般に広まったのでしょう。きっと、そこには挿し絵があって、みんなワクワクしながらその本を宝物のようにしていたのではないかな、と思います。時代は変わり、本も小さく文庫本になり、電子出版も盛んな今日この頃ですが、「本」という概念は、永遠になくならないのではないかと思いました。 装丁や、挿し絵を含む、本そのものを愛し楽しむ気持ちは、液晶に映ったテキストに取って代わることは決してないでしょう。
だいぶ昔の話ですが、偶然金沢の石川近代文学館に行った時、「さし絵・装丁」展を開催していました。現在日本を代表する挿し絵作家の方の作品(主に、時代物や版画など)や、明治~昭和の本を展示してありました。
昔の本は、表紙なども本当に凝っており、もちろん内容は文庫本で読んだことがあるのですが、あんまり趣があるので、物理的な「本」としての価値から、手に入れたくなってしまいます。
この「ないた あかおに」の絵本は、私にとっても、子供にとっても、一生の宝もの。そして、「おに」といえば、池田龍夫氏の、本当の鬼に気持ちをよくあらわしたひょうひょうとした挿し絵を、いつも思い出すことでしょう。
最後に内容についてですが、私は「あおおに君の、自己献身的な生き方は美談ではあるが、子供にはすすめない生き方だなぁ。」と感じました。もっとも「○○ちゃんは、あおおに君が大好きなの。ママはあかおにね!」と無邪気に言っている子供がどう感じているかは、知る由もありません・・・・。
最近、自分の小説に関係した絵を見る度に、「おお」「あ-」「へえ」と感嘆してしまうことが多い。私自身余り気づかなかった小説の雫を、華麗に拡大された場合などとくにそうだ。絵の魅力はそこにある。<作家黒岩重碁氏>
(石川近代文学館「文学を彩る挿絵と装丁~草鞋之会展~によせて」より引用)
浜田廣介の息子さん、三彦さんの幻想刀画展が自由が丘南口画廊喫茶「るなん3724-1785」で5/19~24日に開かれます。彼はかつて、お父さんの挿絵を描いたことがあり、記念館から借りてこの画廊喫茶で紹介したこともあります。今回は直接お父さんとの関係で作った切り絵は出品されませんが、切り絵としては滝平二郎、宮田雅之以上と思います。なにしろ下書きせずに4~5枚の紙を勢いよく切っていくのです。仕上がりの繊細さには驚かされます。ぜひ、いらっしゃってください(藤原=彼の知人です)。
藤原さま、素敵なお知らせをありがとうございました。
また、私の記事にわざわざコメントをいただき、感激です。
スケジュールが許せば、ぜひ足を運んでみたいと思います。切り絵はうちの子どもも大好きですが、自由が丘ですと子どもには遠いため、連れていけず残念です。うちの子は絵が大好きなので、自分が入選した展覧会はもちろんのこと、最近では、ゴッホ展、ポーラ美術館など、できるだけ、色々なところに連れていっていますが、本人は、「あ~、お腹すいたし、疲れた」なんて言ってます。(^^;)