映画「ベルンの奇蹟」 ゼーンケ・ヴォルトマン監督インタビュー今年は「日本におけるドイツ年」ということで、ドイツとの友好行事が目白押しです。その一環で4月16日からシャンテシネで封切られる映画「ベルンの奇蹟」の監督であるゼーンケ・ヴォルトマン氏が先週来日なさいました。
そこで、ワーキングマザースタイル[wmstyle.jp]もインタビューをさせていただけましたので、映画の紹介を絡めながらレポートさせていただきます。
■「ベルンの奇跡」のストーリー紹介
ドイツの人々にとって忘れられない一大事が、1954年のスイスのベルンで行われたワールドカップ。常勝チームだったハンガリーを破って優勝し、「ベルンの奇蹟」としてずっと語り継がれています。この戦後のドイツでもっとも誇らしい出来事に、終戦後9年間もの間、ソ連に抑留され、やっとの思いで戻ってきた父親と、サッカーに夢中な11歳の少年マチアスとの間の葛藤と和解のドラマを交えた映画になっています。スポーツ映画でもあり、家族の映画でもあり、父と息子の映画であり、かつ、父と息子を優しいまなざしで見つめる母の物語でもあります。
- 東京は満喫されましたか?
ヴォルトマン監督:ずっとホテルに缶詰でほとんど出歩いていないんだよ。日本の印象はとても時間に正確だということ。交通機関も正確だし、遅刻する人もいない。
- 映画を拝見させていただいて、サッカー映画という印象はもちろんのこと、家族を丁寧に扱った映画であるという思いがとても強く残りました。特に、夫が抑留中、そして帰宅してからも、カフェを営むことによって家族を養う少年マチアスのお母さんであるクリスタにとても共感できました。
家族は男性が養うものという、古典的な家族観にお父さんであるリヒャルトは縛られていて、その葛藤もあるんですが、そういう夫を我慢強く理解して、かつ、働く手は休めない。すごい女性ですよね。
ヴォルトマン監督:彼女に注目してくれてすごくうれしい。戦後ドイツでは、いや他の国もそうだったかもしれないけれど、女性達は英雄的な働きをしたんだ。夫が戦死したり、働けなくなったケースも多かったから、クリスタのように店を開いたり、外に働きに行ったり、かつ残された子供の母親としても、懸命に生きてきたんだよね。そういうすばらしい仕事をしてきた女性達への賞賛の気持ちを、クリスタには込めたんだ。
- 抑留から帰ってきた夫が、自分と間違えて娘を抱きしめるシーンがとても印象的だったのですが。
ヴォルトマン監督:これは実際よくあった話なんだよ。なぜなら、抑留された捕虜達のなかには、家族の顔をすっかり忘れてしまったというケースがとても多かったそうなんだ。切ない話だけどね。
- お父さんが自分の厳しい捕虜生活について、息子に話すときに、決してソ連のことを悪者に描きませんよね。それどころか、深い共感を感じさせる言葉をお父さんにしゃべらせている。国と国との間、また人と人との間の“赦し”というようなメッセージを強く受け取ったのですが。
ヴォルトマン監督:そうですね。この映画を通してそういうメッセージが伝わってとてもうれしいね。国と国の赦しもそうですが、家族の間でもさまざまな“赦し”が描いているんだ。お父さんは帰還してから、さまざまな失敗をする。それを息子のマチアスが一つ一つ赦していく。壊れてしまった家族の絆を、サッカーを通じて、回復しようとするんだよね。
- マチアス少年は、子供として描かれていないですよね。ちゃんとした大人として描かれているところにとても好感を持ちました。
ヴォルトマン監督:うちには3人子供がいるけど、接するときには、かならず一人の人間として接するようにしているんだ。
- 日本のサッカーは、ドイツの地域スポーツとしてのサッカーに大変強い影響を受けていると聞きます。ドイツでの地域スポーツの状況はいかがですか?
ヴォルトマン監督:ドイツでは必ず子供達は、スポーツクラブや地域の団体に所属して、好きなスポーツを思う存分楽しむ。私は特にチームでやるスポーツが教育に重要だと思う。団体で生きる術を学べるから。
- ドイツのワーキングマザーの環境についてお聞きしてもいいですか?
ヴォルトマン監督:ドイツはご存知かどうかわからないが、現在、失業が大きな問題になっているんだ。ですから、女性であろうが男性であろうが、みな職を得ることがとても難しい状況なんだ。しかし、職につけば、さまざまな制度や法律で、ワーキングマザーは保護されている。社会保障は充実しているといえるんじゃないかな。
また、家族を養うために働かざるを得なかったクリスタの時代と違って、今は自己実現のために働くことを選ぶ女性が増えてきている。これは社会が豊かになった証拠だね。
最後に、サッカー映画としてとらえられることももちろん光栄ですが、家族の映画として、ぜひ女性のみなさんに一人でも多くみていただきたいと思います。
- 本当にそうですね。特に働く母親として共感できる部分、クリスタを見習わなければならない点がたくさんありました。貴重なお時間をありがとうございました。
元サッカー選手という経歴をもつ、ヴォルトマン監督は、とても気さくでかつ丁寧に言葉を選びながらインタビューに応えてくださいました。ゴールデンウィーク、サッカー好きな旦那さんを映画館にひっぱっていくのもいいかもしれません。
■ベルンの奇蹟
シャンテシネより4月16日よりロードショー
※画像は配給会社エレファントピクチャーズ様のご了解の下に掲載しております。