■子育ては、みんなで一緒にやれば楽しい
トレンダーズ株式会社代表取締役 経沢香保子さんは、若くして起業し、「女性起業塾」をはじめ、数々の事業を成功させてきました。一児のお母さんでもあり、かつ第二子を妊娠中。最近では経済産業省の委員会の委員もつとめていらっしゃいます。子だくさんと事業の成功を両立させたいと公言なさっている経沢さんにインタビューしてきました。
― 経沢さんの両立の秘訣はなんですか?
経沢さん:みなさん、よく「両立するのがたいへん?」とか「家事をやるのたいへん?」とか言うんですけど、なんでもチーム次第だと思うんです。家族もチームだし、会社もチーム。どんな人と一緒にいるのかで、ものすごく人生が変わってくると思うんですけど、わたしは本当にチームに恵まれているんだと思うんです。
周りの人がどう背中を押してくれるかとか、理解・協力を示してくれるかということが、女性が働くということについてはとても重要ですね。
― ワーキングマザーで成功するというのは、周囲に恵まれている人が多いし、恵まれるような環境を自分から作っていける強さをもつ人が多いですよね。
経沢さん:そうですね、何事もひとりでやる必要はないと思います。チームで上手に分担していければ楽しいですよね。
― 意外とみなさん保守的で、たとえば、娘が小学校に上がって、他のお母さんと話すことも増えたんですが、娘は当然のごとく丸5年間保育園にお世話になっているんですね。そうすると、「保育園なのに、いい子ですよね」とか言われちゃうんですね。なのに、って何だよ?ってこっちは思うわけです。
経沢さん:たとえば、幼稚園のほうが幸せだとか、親が働いている子はかわいそうとか、そういう一般的な見方からもっと自由になったほうが楽だと思いますけれどもね。
― ほんと、まったくその通りだと思います。いろんな生き方や働き方がある。そしていろんな子育てがある。いろいろあっていいと思うんですよね。だけど、それを当事者じゃない人間達が、すごく意地悪な見方をして、がんばっている女性達を萎えさせる。それは本当に腹立たしいことです。
経沢さん:そうですね。少子化について思うのは、子供を持つ持たないは自由だと思うのですが、産みたいのに、もう一人欲しいのに、産めない世の中だとしたら少しおかしいし、それに対しては支援するべきだと思う。
― 産みたいなと思っていても、今は産めないというような思いを抱えているワーキングマザーやワーキングウーマンはたくさんいると思います。私もそうなんですけど、一人目を産んで職場に戻って、ようやくワーキングマザーとしてのリズムができて、担当も取り戻して(笑)、あともうちょっとがんばれば主任になれる。そんなとき「二人目できました」なんて言ったら、「お前は仕事やる気あるのか?」と言われかねない。そうなると、やっぱり二人目って二の足を踏むと思うんですよ。それが現実なんですよね。
経沢さん:なるほどですね。そういった要因もあるんですね。
― ところで、経沢さんがよくいろんなところでおっしゃっていることで共感するのは「起業は育児に向いている」という言葉。自分で仕事をデザインできるというのは、強いなと。
経沢さん:先程、村山さんがおっしゃってたように、例えば職場でも遠慮しながら生きるのは結構つらいですよね。経営者っていうのは時間で働くものではないですから、結果を出せば極端に言えば週に5時間働くだけでもかまわないじゃないですか。結果さえ出していれば、無駄な遠慮はしなくても良いわけです。そのへんは楽だなと思います。だからといって、全員が社長になれるわけではないですから、子供をみんなで育てるというような社会的なインフラが整えば、みんな“産んでもいいかな”って思うんじゃないかなと。
一人の人間が死ぬまでに国に払う税金ってすごい金額ですよね。なのに家計に負担となる、出産・育児に必要なお金の多さだけがクローズアップされて、産む気を萎えさせる情報だけが独り歩きする。その上、育児に対する政府の保護は手薄くて、老人への支出に比べて圧倒的に少ない。老人には選挙権があって、子供には選挙権がないということもあるんでしょうけど、もう少し上手なお金の使い方があるのではないかな?と思ってしまいます。今、経済産業省の委員会などでも主張しているんですけど、そのあたりが日本って、まだまだなのかもしれませんね。
― 子供が少なくなっていけばいくほど、子供が大切にされるかといえば、まったく逆ですからね。どんどん子供の居場所はなくなって来ています。
経沢さん:なるほど。そうなんですか。
― どうしたら子育てしやすくなると思いますか?何かを一つ変えるとしたら、なんでしょう?
経沢さん:預かってくれるところだと思います。子育ての何がたいへんかといえば、私は“誰かが見ていないといけない”ということにつきると思うんです。ミルクをあげたり、おむつをとりかえたりと、もちろんお母さんがやればいいのかもしれないけれど、誰かの手を借りていいと思うんですよ。地域だったり、互助会みたいなものだったり、子育てにおける相互扶助が、特に都市部ではまったく機能していないですよね。だから、もうちょっと会社が大きくなったら、社内に託児所を設けて、みんなが安心して働けるようにしたいんです。
― 国にやってほしい子育て支援はたくさんあるんですが、それとは別にもう少し一人一人が子育てに対して理解して欲しいとも思いますね。私が少子化でとても恐れているのは、親が少なくなること。自分が子供を持っていなければ、もう子育てとは関係ないという考え方をする人が、多いのではないかと思うんです。大人っていうのは、社会的には親なんだという自覚を持って欲しいんですけど。
経沢さん:なるほど。子は宝だっていう考え方が忘れられがちなのかもしれませんね。じゃあ子供は公共財なんですか?といわれると、感情的にはそうですとはなかなか言いづらいのですが、でもそういう意識も大切ですよね。子供はみんなのものだという意識。小さい頃、よく近所のおばさんとかに叱られませんでした?みんなが親の気持ちで言ってきたり、関わってくれていた。今って以前と比べて親にだけ責任があって、家族内で完結してよね、という感じになってきているのかもしれませんね。
― コミットメントが切れてますよね。
経沢さん:私の友人なんかも、結婚している子は多いんですね。でも、仕事がものすごく忙しくて、「子供は欲しいんだけど、今は無理」みたいなことを言っている。子供に責任をとれるようになるまで、産めないと言うんです。裏返しに、それぞれの子供はそれぞれが責任もってねという認識になっているのかもしれません。たとえば、自分の周囲の人が妊娠して具合が悪くなって早く帰ったりすると、どう対応していいのかわからなくなる。
― そういう経験は、私にもありますね。子供がいなかった頃は、まさしくそうでした。
経沢さん:もしかしたら子育てを身近に感じられないという都市部の環境が東京の出生率の低さを導いているのかもしれないと思います。経験したことがない人がたくさんいるということですから。人間て自分が経験していないことは理解できませんからね。だから、子育てに対して理解できなくなってくるのかもしれません。
あと、私が経済産業省の委員会とか出ていて疑問だなと思うのは、「少子化は仕方がない」という前提で話す人がいること。
― そうそう。許せません!!
経沢さん:成熟した国が少子化になるというのもわかるけど、フランスなどは政府の努力によって改善されてきているんですよね。少子化は仕方がないから、それに対応した国づくりをしようというのは、一見正しいようだけど、長期的に見れば人口構成がおかしくなるわけですからね。
― そうそう。どこかの学者さんとかが、「少子化でいいんだ」というような開き直りの説を偉そうに話すじゃないですか。ふざけるなと言いたいですよね。子供が産みたいけど、産めないとか、我慢しようとか、女性に思わせている国が、成熟した国作りだなんて、おかしいですよね。
経沢さん:日本の税金の使い方で言えば、公共財への歳出が40%の国ってありえないんです。これだけインフラが整っているのに、いまだに道路・公共施設を作っている。子供を増やすための環境を整えることこそ、本質的にはプラスの経済効果だと思うんですよ。リターンがあるところには投資すべきで、子育てには補助という名の投資(支援)をすべきなんです。わたしは73年生まれなんですが、この年を最後に子供は減り続けているんですね。だから30年前からわかっていたはずなのに、もっと早く手を打つべきだったのではないかと思います。
― さて、今後の夢をお聞きしていいですか?
経沢さん:今、女性起業塾というのをやっているんですが、社会にプラスになる事業を展開する女性社長を100人輩出したい。そうしたら、少しずつ世の中は変わると思うんです。最近、女性限定ソーシャルネットワーク[only1.be]も主宰していますが、女性が輝くことができるような楽しい場所を提供し続けてお役に立ちたいと思っています。
===============================
録音したものを改めて聞くと、インタビュアーである私自身がものすごく興奮しているのがわかります。とにかく経沢さんの放つ大物のオーラと、頭の回転のよさに、感動・感激・大興奮しました。こんなかっこいいお母さんがいるということを誇りに思います。
トレンダーズでは女性の起業家育成を支援するさまざまな事業を行っています。
自分の会社をつくるということ
6月23日に発売される、経沢さんの初めての著作です。
素敵ですね。経沢さんの本もぜひ読みたいです。早速注文しました。
一本筋の通った方という印象を受けました。今後のご活躍を期待しております。
「産む気を萎えさせる情報だけが独り歩きする」というお言葉に同感です。経沢さんのような方が経済産業省の委員を務めていらっしゃる事を、ワーキングマザーの1人として心強く思います!
税金の使われ方のお話、全く同感です。
こういう観点を持っておられる方が、経済産業省の委員をなさって、どんどん意見を言ってくださると、少しずつでも変わっていくのでは、と期待しましす。
子供が欲しいな、と思う人たちが安心して、仕事も子供もゆったりした気持ちで、両立できる、そんな日が案外はやくくるかも、と経沢さんのインタビュー読んでいると、そんな気がしてきます。
「子育てを身近に感じられないという都市部の環境が東京の出生率の低さを導いているのかもしれない」には(私が育ったのは大阪なのでちょっと違うでしょうけど)同感です。
「リターンがあるところには投資すべきで、子育てには補助という名の投資(支援)をすべき」こちらにも、深くうなずきます。
公共投資のわずかでも、育児支援・教育環境支援に回してくれれば…。
私の(勝手な)イメージでは、経沢さんはDINKS派なのかなぁ、と昔思っていたのですね。
そしたら、気づけば出産されていてお二人目も、という事にとってもオドロキました。
経沢さんの発言で、委員会の方々も意識改革が進む事をとっても期待してしまいます。
私たちの世代は、産みたくないわけではないんですよね。ただ、不安が勝るだけで…。
凛とした雰囲気があって見とれてしまいました。経沢さんのような方が、少子化について提言されるとすごく説得力がありますね。
「今って以前と比べて親にだけ責任があって、家族内で完結してよね」という風潮は同感です。
経沢さんの意見が経済産業省の委員会で共感を得られるならば、少子化の行方もそう悲観したものではないなあ、と思います。「少子化は仕方ない」という人は論外として、他の委員と経沢さんのギャップがどれほどなのか、興味があります。
経沢さんのどの言葉もすごく納得して、うんうんと思いながら一気に読み終わりました。
ニュースを見ていても、少子化対策は、対策しているようで先送りの雰囲気をものすごく感じてがっかりしていたのですが、このインタビューを読んで、元気がでました。
経沢さんのような方が経済産業省の委員会の委員をやってらっしゃるのはとても心強いです。
小さなことでも、自分ができることをやってみようと思いました。
このインタビュー記事を読んで、言葉にできなかった自分の考えが徐々に見えてきました。一気に読ませていただきました。ワーキングマザーの一人として「一般的な考え方」に縛られ居心地が悪いのは当たり前だと諦めず、前進していこうと思いました。
「子育てを身近に感じられないという都市部の環境が東京の出生率の低さを導いている」・・・確かにそうだと思います。私自身、子供が生まれるまで、子育ての大変さ、そして楽しさなんてわかりませんでした。女性だとか男性だとかに関係ないですよね。経験することが理解するための早道ですが、経沢さんのような方が経済産業省の委員として的確なご意見をどんどんぶつけてくださることに期待しています。少子化・・・すぐには改善できない、そして実は最も重大な社会問題だと思います。
確かに、昔のように地域全体で子育てする感覚はなくなっていますよね。それどころか、隣近所の関係も薄くなる一方。
保育園やまわりの環境がよくなることはとても大切だと思います。ですが、本当にそれだけでしょうか?預かってくれる人が増えると、子育てしない親が増えるのでは?と懸念されます。そうではなく、子育てしながら働くことが当たり前の社会、また男性の育児参加、育児休暇・時間短縮勤務・介護休暇が当たり前の社会が必要かと思います。子供が小さいから早く帰る、熱を出したから休む、それで仕事の責任がなくなる、そうなれば産まない女性が増えてしまうのは当然です。そうではなく、時短勤務でも介護休暇でも、まわりが理解・協力していけばいい。
是非、そんな社会になってほしい。
現在の私のWM生活から思うことを書かせていただきました。
私が長男を出産した頃は、育児をしている母親は孤立してような感じでした。その気持ちをわかってくれるのは、同じように育児をしている母親しかいないような状況。
社会全体で子どもを育てていくという意識は、絶対に必要だと思います。子どもを産んでもリスクにはならないという社会のシステムを、もっと整備してほしいです。
また、子育ては子どもを社会に出すまでだと思うので、思春期頃の子ども達も手が掛からなくなったからと手放すでのはなく、見守っている地域や社会の意識も必要だと、最近、ぐっと感じています。
私の子育て時代にくらべて今は、ワーキングマザーにとっていろんな選択肢があり、「昔こんな仕事の仕方やサービスがあればどんなに良かったか」と思います。SOHOで子育てしながら働くということ自体、考えられなかった当時を思うと正直「こんなに恵まれている状態なのにどうして?」とも思います。でもそれでも子供を産むことを躊躇する女性が多いなら、それはやはり子供を産むことのよさや、子供を産んでもやりたいことを実現する選択肢があるということがちゃんと伝わっていないんですね。
インタビューを読んで改めて「伝えないとなぁ」というきもちになりました。
私は実家の母に御世話になりっぱなしのWMです。最近母と母の友達とその娘さんと旅行にいき、母の人生もまだまだ尊重しなければと思わされました。
年をとってくるというのと、WMが求めている楽しみながら子育てしたいという気持ちは孫の世話をする祖母の立場でも同じなんだと強く感じ、しずかさんの、「子育てしながら働くことが当たり前の社会、また男性の育児参加、育児休暇・時間短縮勤務・介護休暇が当たり前の社会が必要かと思います。・・・」というご意見のような社会、会社になるようなシステムが出来ればなと私も思いました。
決して母の立場でも孫の世話、娘の助けをすることが嫌なのではないと思うのです。ただ経沢さんがおっしゃる「チーム」としてもっと心の余裕のある環境があれば子育ては楽しく、二人目問題も深く考えることなく自然に出来るのだろうな・・と思います。「一般的な見方からもっと自由になったほうが楽だ」というご意見、色々な人の手を借りっぱなしの私に元気を与えてくださいました。ありがとうございます。
子どもは多い方がいい、と考えられる女性って、周りを見渡しても本当に少なくなっていると感じるので、インタビューを読んでまずはそこに素直に感動しました。
地域全体で子育てをする雰囲気、子供を産んでも働き続けられる社会の仕組み、そういうおおらかさは、WMのためだけでなく、子供のためでもあるんですよね。
もうこの方は経済産業省の委員は降りましたよね。実体がなさ過ぎますから。
はじめまして。経沢さんもインタビュアーの方も
ワーキングマザーとして、とても素敵で見習いたいなぁと思いました。