■介護もお受験も、学ぶチャンスと考える
子どもといっしょに 安心インターネットシリーズの著者(共著)である、尾花紀子さん。IBMでの華々しい活躍の一方で、2人のお子さんの受験や、お父上の介護を経験されました。ワーキングマザーが多かれ少なかれ将来直面する、子供の受験と、親の介護について、お伺いするとともに、子供とインターネットについてもあわせてお聞きしてきました。
― まずはビジネスコンシェルジュという言葉に込めた思いをお聞きしていいですか?
尾花さん:私の仕事のスタイルと、コンサルタントという肩書きとは、どうしても違和感を感じていたんです。生活者としての目と、実践で鍛えたPR、EC、マーケティング、IT、教育など様々なノウハウを、分野ごとに寸断されることなく一つの知恵としてアドバイスさせていただきたいと考えていましたから、コンシェルジュという言葉が浮かんだ時は、「これだ!」と。
ビジネスの世界でのコンシェルジュでありたいと思っています。
― オールマイティーな尾花さんにぴったりの肩書きだと思います。尾花さんは大学を卒業後、IBMに就職。華々しいご活躍でいつも私の目標だったのですが、就職から2004年にIBMを退職するまでをざっとお話いただけますか?
尾花さん:最初は秘書だったんです。今の私からは想像できないでしょう?PCのプロモーションがやりたくて入社した私ですから、当時は「OAに異動したい」と主張し続けていました。周囲のご尽力もあって、1年ちょっとで企業アドバイスやイベント企画などを行うOA部門に移れたんです。20代半ばで、晴海の展示会のようなイベントでPCコーナーを偉そうに仕切っていましたね。(笑)製品のどこが訴求ポイントで、ナレーターさんにどこを強調してもらうかなんていうシナリオも全部書いたんですよ。
― 代理店さんがやってくれるわけではないんですね。
尾花さん:もちろん!一番のエポックは、ウインドウズ3.0が世の中に出るとき。いろんな出会いがあって、90年のビジネスショウ@大阪のIBMブースで日本で初めて公開することができたんです。あの頃は、ハードベンダー、ソフトベンダー、雑誌記者ほか、パソコンにかかわる人はみんな「PCの創生期を築いた仲間」という感じでしたから、大学の教授や、企業や協会などのトップの方々たちとも、親しくやりとりさせていただきました。今でもそのお付き合いは続いていて、得をしている部分がたくさんあります。
●●尾花さんの年表1961年生まれ
1984年 跡見学園女子大学文学部卒業
1984年 日本アイ・ビー・エム株式会社 入社
1985年 OA部門へ転属。
1990年 米国発表翌日、Microsoftに先駆けて「Windows3.0」を初公開(@ビジネスショウ)
これをきっかけに、全国で「Windowsの現状と動向」の講演を行う
1991年 IBM版「Windows J3.0」の発表会を行い、翌日より産休に <第一子出産>
1992年 育休中のオプショナル勤務で、(財)CG-ARTS協会にて CG検定の立ち上げに寄与
1993年 再び産休に入る <第二子出産>
1994年 AptivaやThinkPadを専門に扱うコンシューマー事業部に復職
1997年 IBMとフジテレビの共同事業であったプロバイダー(PeopleからFFNetへ)出向
2002年 日本アイ・ビー・エムに帰任
エグゼクティブセミナーのインストラクターとして、経営・IT戦略のレクチャーを担当
2004年 IBMビジネスコンサルティングサービス(株)に出向、コンサルタントに
2005年 4月末、21年1ヶ月勤務したIBMを退社し、フリーで活動を開始
― それから、ご結婚。お二人出産されていますよね。
尾花さん:そうです。そのころIBMは育児休職制度だけではなく「オプショナル勤務(会社のニーズにより休職中の週半分勤務が可能)」という制度ができて、下の子の妊娠中の仕事はそれを活用しました。まるで私のためだと勘違いしたくなるほどいいタイミングで新しい制度が次々できるので、いろんな制度をうまく活用させていただきました。それなりの、努力も必要でしたけれどね。
― ものすごく活き活きとIBMという会社をエンジョイなさっているように見えたのですが、辞められた理由はなんですか?
尾花さん:辞めたのは2005年4月末ですが、創生期からIBMのパソコンを愛してきた人間として、やっぱりPC部門売却という時代の流れが大きなきっかけになりました。ニュースを聞いた時はコンサルタントでしたし、IBMでやれることは全てやったなと。PCと共に始まり、PCと共に終わる、美学でしょ?(笑)
― IBMを辞められて、矢継ぎ早に3冊、本を書かれましたが、それぞれのコンセプトと、込めた思いみたいなものをお伺いしてよろしいですか?
尾花さん:よく分からないもの、教える自信のないもの、子どもたちの好奇心に対応できそうにないもの、そういったものを子どもたちに伝えることを苦手としている大人たちが増えています。そのためもあってか、佐世保であったような事件が起こると、ネットが子どもたちに悪影響を及ぼしているように扱われがちなのが、とても気になっていました。
子どもたちに道の歩き方や横断の仕方、そして、その際にどんなことに気をつけたらいいかを教えない親も先生もいません。道路は車が通って危険だからと家に閉じ込めておくご家庭もないでしょう。なのに、ネットとなると途端にしり込みをしてしまいます。何故なら、自分たちが幼いころ教えてもらった覚えがない「新しい文化」だから、どう教えてあげていいかが全く分からないからなんですよね。
太古の昔から、全ての道具には「危うさ」と「可能性」が混在しています。刃物の危うさは誰もが知っていますが、刃物があるからこそ、立派な建物もステキな洋服も美味しい料理も便利な道具も作れるのです。ネットに混在する多くの「危うさ」と多くの「可能性」も、他の道具と何ら変わりありません。唯一違うのは「危うさ」が目に見えづらいということだけ。
学習にも研究にも役立ち、就職にも不可欠、そして、人脈やビジネスでの成功などももたらしてくれるネットなのに「危うさ」をきちんと教えてもらえる環境が今の子どもたちにはありません。大人にとって面倒な部分がフィルターで覆われているだけ、あとはルールもお行儀も知らないまま、自己流で好きなように使っているわけです。人生経験豊富な大人とは違う、素直で、的確な判断ができるほどの経験もない未熟な子どもたちに「自分で判断しながら行動しなさい」と放りっぱなしにしているようだとは思いませんか?
― 耳が痛いですが、その通りですね。
尾花さん:「なにが危険なのか」「どう身を守るのか」をきちんと伝え、それを理解することができれば、ネットという道具の可能性を十二分に生かした活用ができる子たちに成長してくれるはず。せっかくだから、「どんな可能性があるのか」もお伝えしよう。
これが、『子どもといっしょに安心インターネット』の各巻「なにが危険なの?」「どうトラブルを避けるの?」「なにができるの?」という形になったのです。
― どうしても早く子供たちにコンピューターを教えたいと思いがちですが、尾花さんは子供のパソコン教育についてはどう思われて、どうお子様方に使わせていますか
尾花さん:IBM時代から、親子向けのパソコン教室の運営やエデュテイメント(=教育)ソフトのディレクションなどをしていましたが、いつもお話ししていたことがあります。
「今のパソコンは、普通の操作をしている分にはそう簡単に壊れません。ですから、自分で操作して、いろいろな発見をしながら覚えていきましょう」
パソコンの仕組みから教える必要があるのは、形から入らないと不安な大人たちだけ。また、操作方法のイロハなどは、自宅にパソコンがあるなしに関わらず、好奇心旺盛な子どもたちは教えなくてもすぐにできるようになります。
「考える力」「発見する楽しさ」などを育む道具としてパソコンを使う学び方は大いに賛成ですが、テキストどおりに画一的に教えるパソコン教育は、子どもの道具に対する柔軟さを損なってしまう気がしています。
先生がきっちり教えて欲しいことは、パソコンは単なる道具であって、パソコンの向こう側には人がいるのだということ。だから、ルールはあるし、マナーも必要、いい人ばかりではなく悪い人だって大勢いる──このあたりを、幼いころから年齢に応じて教えてあげて欲しいですね。
もちろん、我が家ではそうしてきました。子どもたちの友達も、不安になると「これって何が起きているの?」と、私のところに訊きに来てくれるんですよ。
― 我が家ではインターネットはまだ使わせないように遠ざけていたのですが、尾花さんの言葉で、方針が大きく変わりそうです(笑)
さて、ワーキングマザーも最近は子供に受験させるという選択肢を選ぶように、選べるように、ようやくなってきましたが、尾花さんはその先駆けかと思います。ワーキングマザーとして働きながら、お子さんに小学校受験をさせていらっしゃいますが、それはどんな経緯ですか?
尾花さん:玄関を出て徒歩1分の場所に、公立小学校がありました。自宅の前が通学路だったんですね。大人のいない留守宅に、小学生の子どもたちが大勢遊びに来たりして、何かあったら大変!という、物理的な不安も少しだけありました。でも、大きな理由は、中学受験をさせたかったからです。
不思議に思われるかもしれませんが、うちの子たちが通った小学校は受験校で、中学もありますが、100%外部受験なんです。まだまだ、親の気持ちがそのまま子どもに反映してしまう、妙な意味ではない「マインドコントロール」されてしまう年齢の6歳の子どもですから、どんな小学校に入っても純粋な子どもの意志ではありませんよね。
子どもが、こんな勉強をしてみたい、あんなスポーツがしたい、そういう意志が芽生えてくるのは、10歳を過ぎてから。だとすると、学校全体で中学受験に向かって取り組んでくれる小学校が、学習面でも友人関係でもベストな環境なのではないかと思ったわけです。
― ワーキングマザーとして受験をさせようとすると、塾通いなどなかなか難しいと思うのですが、尾花さんはどのように両立させていらしたんですか?
尾花さん:実は、3歳4歳からお受験塾に通わせるようなことはしませんでした。子どもの集中力は2ヵ月が限度、一番面白い!と思うタイミングで受験となるよう、年長さんの9月から通い始めました。それも、極力土日を利用して。そのため、私の負担も最小限で済んだのです。
下の子は、一緒の学校に通わせたかったので、推薦入試日の受験を選んだため、1ヶ月ほど早く始めました。それは、受験日が1ヶ月早かったからという理由。夏休み期間が入ったので、平日に通うこともありましたが、2人とも2ヵ月の塾通いだけです。(笑)
これが可能だったのは、別の理由もあります。大人のような先入観や一般常識を持たない子どもの柔軟な発想では、いくつもの答えを発見してしまうような問題が多々出題されます。そのため、塾では「合格するために正解であるコレを選びましょう」と発想の矯正を行わざるをえません。子どもたちは、自分の発想で自由に答えてはいけないために、多くのことを記憶しなければならないのが現状です。だから月日がかかるのです。
私は、子どもの発想を固くしてしまうことを「絶対にNG」と思う変わった親なので、矯正はしないでくださいとお願いしました。素直に、子どもの思う答えを伝えられる準備だけしていただいたのです。もちろん「それでは有名校は難しいですよ」と言われましたが、「そのまんまの息子を受け入れてくれる学校に行かせたいので、構いません」とお話しすると、先生はよく理解してくださって。
膨大な数のお子さんが受験をされ、絞り込むために「優秀やいい子が落ちてしまっても仕方が無い」と割り切ってフルイにかけざるを得ない有名校を受験したかったのだとしたら、この手は使えなかったと思います。
― 小学校・中学校ともに受験を経験させていらっしゃいますが、どう違いますか?
尾花さん:小学校受験は「親がどれだけ頑張れるか」みたいな感じです。それに対して、中学校受験は「頑張っている子どもをどれだけ親がサポートできるか」というところでしょうか。
3歳~6歳のお子さんの場合は、塾に連れて行くのも、その道中で触れるさまざまなことを学ばせてあげるのも、自宅での会話や食事などで季節感などが自然と学べる環境を作ってあげるのも、全部親となるわけです。シッターさんに送り迎えをしてもらうだけ、家でもかまってあげられない、というハードなワーキングマザーの場合、パパがよほど協力をしてくれない限り、他の子よりも吸収量が少なくなり、お受験に失敗してしまう可能性も出てくるのではないでしょうか。
受験に失敗して「ママ、ごめんね」というお子さんもいるようですが、まさに「ママが頑張った」を象徴していますよね。
中学受験は、勉強をするのは子ども自身です。問題集も参考書も、自分の力で読み解くことができる学齢になっています。ですが、まだまだ子どもだということを忘れてはなりません。自分の力がつかなければ志望校に入れないというプレッシャーは、かなりの負担となります。より一層のプレッシャーをかけるが如く「勉強しなさい、塾の宿題はやったの?」と連日矢継ぎ早に怒鳴っていては、子どもたちは追い詰められてしまいます。塾に行く時間になるとお腹が痛くなったり、受験直前に体調を崩したりする子が多いのも、すべてストレスから来るもの。
自分で行動し、自分で学べるからといって放りっぱなしにせずに、学園祭の見学や学校訪問なども含め一緒に行動をしてあげたり、分からないところはフォローしてあげたり、時には一緒に学んであげたり。そして、ストレスに負けそうになった時は、適当に塾を休ませたり気晴らしにカラオケに連れて行ったりなど、臨機応変なサポートが重要なのです。
「よーいどん!」で算数の計算問題の計算を競争したというワーキングマザーもいます。時々負けてあげるのがコツだと話していた彼女も、受験直前は真剣勝負をしても勝てなかったそうです。
― これから受験をさせようと考えるワーキングマザーがたくさんいると思うんですが、何かアドバイスはありますか?
尾花さん:小学校受験は、入学直後の通学サポートも必要ですし、遠足や校外見学などが学校集合ではないことも多々あります。先日も、卒業旅行のために東京駅まで送り迎えをしましたが、そういうこともあるのだということを考え、通学距離等も含め、ご自分の仕事や家庭環境でフォローをし続けてあげられるかどうかが、鍵になると思います。授業参観はいつもおばあちゃん、お見送りもたまたま近所にいる同級生のママ、平日の父母会もほとんど参加できなくていつも子どもがお知らせを持ち帰ることになる。
そんなことが続くと、低学年の子どもたちには精神的なダメージとなってしまい、トラウマとなって後々まで引きずってしまうこともあります。まだまだママの暖かさが必要な年齢、子どもに負担無く通わせられる学校を選び、塾も子どものペースとママが付き合ってあげられるスケジュールを上手く掛け合わせて通うようにされてはいかがでしょう。
中学校受験は、子どものストレスをできるだけ減らしてあげるのがママの役割。ワーキングマザーは一緒にいてあげられる時間も専業主婦に比べて多くはないはずですから、少ない時間でもきちんと届くフォローをしてあげましょう。少ない時間に勉強勉強とあおっては、ストレスは倍増します。
子どもの数が少なくなってきていますが、中学受験の志望者は増えています。塾の経営というビジネスからすると、一人でも多くのお子さんに、一コマでも多く通って欲しいというのがホンネのはず。確かに、中学受験は大変ですが、塾の先生たちの「もっと増やさないと合格は望めません」のような言葉をそのまま受け入れ、子どもたちが参っているのにコマ数を増やして睡眠時間も削ってしまうようなことになってしまうのは避けたいところ。
「じゃあ、コマ数を増やせば絶対に合格できるんですね!」と質問したら、先生は必ず「それはお子さんの努力に掛かっています」とおっしゃるはず。最終的には子どもたちがどれだけ自分の実力を伸ばし、それを十二分に発揮できるかなのですから、冷静に判断し、子どもの希望を聞きながら一緒に考えて結論を出されるのがベストです。
これは、志望校に関しても一緒です。親のプライドや塾のステータスアップのためにブランド校を無理やり受ける必要はないと考え、休みの日を利用したり、時には休暇を取ったりしながら、いろいろな学校に何度も足を運んで、中1からの学校生活を有意義に送れる学校を子どもと一緒に選び出しましょう。当然、子どもの意見を尊重しながら!
賢くセンスあるワーキングマザーだからこそ、上手な塾選び・学校選び・ストレス解消ができるのではないかと思っています。
― 尾花さんは、お子さんの受験と並行して、介護もご経験されています。今も真っ只中でいらっしゃるわけなのですが、介護という問題がでてきたのはいつごろでしたか?その頃、仕事や家庭はどのような状況でいらっしゃいましたか?
尾花さん:父が車椅子を利用するようになったのは、下の子が生まれる少し前です。その頃は、長時間でなければ杖を突いて歩くことができましたから、日常生活にそれほど大きな負担はかかりませんでした。
上の子が2歳の年で大きなお腹を抱えていましたから、仕事は小休止のタイミングでした。同居はしていませんでしたが、翌年の春までは下の子の育児休職だったことと、病状がそれほど進行していなかったことが幸いして、通院の車での送り迎えなども容易に出来、医師から先々のことを聞かされても、まるで実感のわかないほど平和な日々でした。
― お父様の介護について、どのような経緯であったか、差しさわりのない部分でお話いただけますか?
尾花さん:徐々に動けなくなる介護の全ての経緯を体験してきた気がします。
杖を突いて散歩に出ても転んで怪我をすることが増え、外出は車椅子でなければ無理な状態になりましたが、それでも旅行などには連れて行ってあげることが十分できました。13年の月日を経て、自宅で歩行するどころか立つことも難しくなり、食事も流動食から胃ろうを使うように。今では、車椅子に座らせることもできず、長期入院はなかなか受け入れてもらえない状態にまでなってしまいましたが、幸い、とてもいい設備とスタッフに恵まれた病院にお世話になることができ、自宅介護のときより血色もよく母と共にほっとしています。
― 一番介護で辛かったことはどのようなことでしょうか?
尾花さん:介護だけに向き合っていると精神的な負担が大きいだろうと、子どもたちには学校から実家に帰ってもらったりもしました。小学生の世話は、体力的にはちょっぴり疲れると思いますが、面倒を見ることが好きな母にとってはいい気分転換になったようです。
でも、ストレスのせいで切れやすくなっていて、時折、子どもたちは理不尽な叱られ方をしたそうです。介護の経過と大変さを目の当たりに見てきた子どもたちは、優しく思いやりのある子に育ちましたが、帰宅後に理不尽さを泣いて訴えられたこともあって、とても複雑な思いでした。
また、病院にお世話になる直前の1年くらいでしょうか。ちょっとノドがゼロゼロすると窒息する!と神経質になっていた母は、24時間ほとんど寝ないでベッドの脇で仮眠をしているような状態で、体力的にも精神面でも、限界に来ていました。
母のストレスケアは、私の役割。介護師さんやヘルパーさんに「何故あなたは仕事を辞めないのですか?」といわれ続けました。親戚にもやんわりと同じことを言われましたし、休みが続くと職場でも「介護休職でもしたほうがいいのでは」とささやかれたり・・・仕事を続けることに対して、針のむしろ状態だったのです。
いつまでかかるかわからない医療費等のことを考えると、娘二人の実家では私が仕事をやめたらどうなるのだろう、何故、そのことに誰も気付いてくれないのだろう。その場しのぎの対応をしていたら、長期スパンで考えたら収拾がつかなくなるのに。そう思いつつも、私が仕事をやめて日中実家にいてあげたら、子どもたちのストレスも緩和されるのも確かで。
妹が地方在住の今、「医療費」と「ストレス」を共に解消するには、私が2人必要。結論の出ない悩みで苦しみ続けました。気持ちの余裕なんてこれっぽっちもない、介護のために家庭崩壊してしまう家族の気持ちが、痛いほどよく分かる日々でした。
遠くても何とか通える距離にいい病院が見つかり、自宅にいないと不安だった母が、血色のいい父の顔を見て安心してお任せするようになり。そして、お腹にいた娘も自ら選んだ中学に4月から通う年齢に。
医療費以外の悩みや苦しさから、ようやく解放された気がします。
― 介護に備えて、私たちがやっておくこと、心がけておくことをアドバイスいただくとしたらどんなことでしょうか?
尾花さん:核家族化が進む中、親の介護の負担は一世代前よりはるかに大きくなっていると思います。夫婦双方の親がお元気であれば、元気なうちに親子・夫婦・兄弟姉妹で、お正月などに集まった折にでも、ざっくばらんに話し合ってみることが大切ではないかと思います。
「どちらかが具合悪くなったら、2人で施設でのんびり暮らすから心配しないで♪」なんておっしゃるご両親もいるかもしれません。気にして一人悶々と悩むより、コミュニケーションを取るほうが具体的に見えてくるはず。それによって、仕事のコントロールなどを考えてみることもできたりするかもしれませんしね。
また、子どもたちには思いやりの心を伝えてあげたいですね。うちの子たちはたまたま、物心つく前から介護を見てきましたが、成長してから介護に直面する子たちも多いはず。ゆっくり足元を確認しながら歩いているお年寄りを「邪魔だなぁ鬱陶しい!」と苦々しく思うような子に育ててしまっては、何かあった時に協力してもらえるはずがありませんし、理解すらしてもらえないかもしれません。
介護に直面するしないに関わらず、人として、自分より弱い相手に対する思いやりの心を持った大人になってくれるのは望ましいわけですから。
介護に限ったことではなく、どんなことでも「コミュニケーション」が大切。さまざまなシーンで上手なコミュニケーションを心がけているワーキングマザーであれば、急なことがおきても困らないと思います。
― 受験、介護、出版、そして新事業。さまざまなことに全力で取り組む尾花さんのそのバイタリティーはどこからやってくるのでしょうか?
尾花さん:人生一度きり、女性でしかできないことや、そのタイミングを逃したら経験するのが難しいことがあれば、何でもやってみたいじゃないですか。私って、そういう意味では好奇心のカタマリなんですよ。(笑)
また、介護のような「その道を避けて通れなかった」ことも、予期しなかった体験ができたと思えば、学ぶところが沢山あります。家族の介護の経験がないケアマネージャーさんよりよっぽど、何に困り、何が必要かがわかりますし、元気で両親が健在な政治家の人たちより、介護の実情も語れます。ビジネスマンとして尊敬していた素晴らしい父は、病床にいてもなお、私を育ててくれているのだと思ったら、嬉しいじゃないですか。
そう考えると、何でも飲み込むアメーバーみたいですね。プラス思考もいいところです。(爆)
やり方や答えを教わる教育をされてきて、「気づく力」も「発想する力」も弱くなってきている今の日本で、知的好奇心による人とは違ったアイディアや知恵を持っていることが自分の価値だと思っていますし、それが楽しくて仕方が無いんです。
せっかくだから一人で抱えて楽しんでいるだけでなく、大勢のみなさんのお役に立てたらもっと嬉しいので、本やビジネスという形に表現させていただいている。そんなところじゃないでしょうか。
― 尾花さんの口から出るからこその、重い言葉ですね。最後に、ワーキングマザースタイルの読者に、メッセージをお願いいたします。
尾花さん:「誰かが何かをしてくれなかったから、○○ができなかった」という言葉が一番嫌いな私ですが、だからといって、「頑張りすぎ」はしないように心がけています。
また、「反面教師」の発想が好きなので、誰かの苦労話を聞いて「私と一緒だ、よかったぁ~」と安堵するのは嫌いなんです。せっかくの経験談は、巧く活かしてより良い形にするにはどうしたらいいかと考えたほうが得じゃないですか。それは、自分の過去の経験に対しても同じです。
子育てにしても仕事にしても、頑張りすぎず、失敗や苦労は次への肥やしにして、歩んでいきましょう。
時には、休んだり後退したりすることも大切。弓は、後ろに引くことによって、矢を遠くへ飛ばしますよね。負の力は、大きなジャンプアップに繋がることだってあるんです。
人とのコミュニケーションを大切にしながら、その時々の「良い加減(≠いいかげん)」で自分のライフスタイルを綴っていきましょう♪
― 今後わたしたちが直面するだろう、受験や介護について、真剣に考えることの大切さと、背負い込まないことの大切さを痛感しました。本当に、貴重な言葉の数々をありがとうございました。
本当にたいへんなこともたくさんおありでしょうに、軽々とお話なさる尾花さんに、感動という一言では言い切れない、なんともいえない気持ちをいただきました。パワーをいただいた感謝の気持ちと、心からお疲れ様、ご苦労様と言いたい気持ち。これから苦労に直面したときに、また、このインタビューを読み返したいとつくづく思います。(村山)
■尾花さんの公式サイトビジネスコンシェルジュとしての尾花さんのこれからに注目です。
以前ハッピーコムのメールマナーのセミナーを受講してお話を聞かせていただいたことがあります。
改めてお話をお聞きして、本当に色々考えさせられることばかりです。私はまだ両方の親の介護には関わっていません。でも母がアルツハイマーの祖母を苦労して診ていたのを記憶しているので、やはり10年後を考えて今から気持ちを向けておく必要があると痛感しました。
尾花さんのように介護の苦労でさえプラスに考えられるようになるためにはまだまだ修行が必要ですが目標にさせていただきたいと思います。
私の両親は団塊の世代ですが、その世代は今まさに介護問題を抱えています。私の実家も、まさにその渦中で、結局一人負担を負っていた母が倒れてしまいました。まだまだ先の事と思っていましたが、両親が元気な今のうちに家族で色々話しておくのは大切ですね。
今回一番印象深かったのは、
>誰かの苦労話を聞いて「私と一緒だ、よかったぁ~」と安堵するのは嫌いなんです
という話。
これは女性(もちろん私も)が大好きな雰囲気ですが、こういうところからも学んでいけるんですね。とても勉強になりました。
フルタイムで働きながらの2度の出産、受験生の母、ご自身のキャリアアップ、そして介護。どれかひとつでもいっぱいになってしまいそうなことをすべて体験され、どれもプラス方向に作用させているのは、もちろん大変なこともたくさんおありだったと思いますが、本当に素晴らしいです。
受験にしても、ワーキングマザーならではの選択眼、判断力で、尾花さん親子にとって最適な環境を作られているのですね。何が大事なのかをしっかりと見極めて行動するのは、口で言うほど簡単ではないと思います。
本当に、感動と勇気とパワーをいただきました。ありがとうございます。
家庭にいるからできること、家庭にいないからできること。そしてその反対を客観的にとらえて一つずつ選択されてきたのだなぁと、勉強になりました。物事の二面性をみていくことの大切さを再認識、です。ありがとうございました。
尾花さんのセミナーで何度かお話をお聞きしたことがありましたが、明るく華やかないで立ちから、そんな苦労があったとはちっともわかりませんでした。
どんなことでも「コミュニケーション」が大切、というのは非常に感じますし、今後も肝に命じていきたいです。ついつい、めんどくさくなっちゃうときもあるのですが。
私も、どんなことからも貪欲に学んで行きたいと思います。
いつもながら、たくさんのパワーをありがとうございました。
ものすごく頑張っているはずの尾花さんの口から「頑張りすぎないことが大事」という言葉を聞くと、説得力があります。「好奇心のかたまり」であると同時に、「休んだり後退すること」を恐れない、そんなしなやかさに、刺激を受けました!
親の介護問題・・・その日が来たら、と思うと正直、気が重くなっていました。でも、尾花さんのインタビューを読んで、仕事をしながらでも、育児をしながらでも、乗り越えていくことができるんだ、と勇気がわいてきました。何事も状況は一定ではないんですよね。頑張るけど、頑張りすぎない女性に私もなりたいと思いました。
義父母と同居しています。おとといの事です。義母が一泊旅行の夜、義父の具合が悪くなりました。ふらふらして布団も敷けない状態でした。その時に「これからどうなるのかなあ。これが『親の介護』っていうものの始まりかもしれない。」とぼんやりと思いました。結局、一晩寝たら、元通り。義母がいなかったので、気を許してお酒を飲んだのが原因だったようです。でも、そう遠くない「介護」を身近に感じた一瞬でした。尾花さんのインタビューがとても現実味を持って心に染み入りました。
>時には、休んだり後退したりすることも大切。弓は、後ろに引くことによって、矢を遠くへ飛ばしますよね。
この言葉、とてもステキです。休んで、後退してばかりの私ですが、少しでも前に飛べるように、尾花さんを見習いたいと思いました。ありがとうございました。
そうそう、それから前半のお話で・・・
ネットと子どもの関係について。これは、今週の特集のゲームさせる?させない?にも繋がる大切な話だと思いました。「危ないからだめ。」と禁止せずに「いいこと・わるいこと」を含め、よおく、説明するという事が大切ですよね。特にネットは、上手に利用すれば、勉強にも役立つと思います。冬に「朝顔の葉の裏側がどうなっているか調べて来る」と言われても・・・。でも、ネットでなら調べられますしね。子どもに、使い方、ここが危険だよなど、よくよくよーく教えるつもりです。
尾花です。お読みいただいたみなさま、ありがとうございます。
らむねちゃんの取材は見事で、おしゃべりに夢中になっていてお化粧が途中だったことをすっかり忘れていて。。。私のヌケたところが露見した写真となってしまいましたが。(笑)
お寄せいただいたコメントに、私のほうがいっぱい元気をいただきました。その感謝の意も込めて、以下にレスを書かせていただきました。長文になりますが、お許しくださいね。
>大橋ゆりさん
お久しぶりですね、お名前覚えています。頑張っていらっしゃる様子で、何よりです♪
ご両親がお元気な今から一緒に考えたり話したりするのが、結果として、お客様にご迷惑をおかけしないという危機管理に繋がると思います。ワーク面だけではなくライフ面の危機管理術も持つ、賢い女性経営者になってください!
>田村小梅さん
「夫婦間」「高齢の親子間」での老老介護は、今申告な問題となっています。お母様が本格的に寝込まれてしまう前に、時折、手伝ってあげたり愚痴を聞いてあげたりするのが、未然の策としてベストかもしれませんね。精神的な支えがあると違います。そして、お母様の介護の様子から学ぶことも多いと思いますから。(^^)
>ふうこさん
さっきまで中2の息子を叱りながら「居心地のいい環境は与えられるものじゃなくて自分で作るものよ」と何度も繰り返したところです。でも、こんな言葉は娘には言ったことがありません。娘とは、勝手に母親を見て育ってくれるんだなぁ~と。
お嬢さん2人のお手本になるよう、ステキに暮らしてくださいね☆
>柚子さん
「物事の二面性」── まさにそうですね。私は「鳥瞰」という言葉が好きです。「俯瞰(高い所から見下ろす)」と同じ意味で使われますが、自由に飛びまわりながら見下ろせる鳥のほうが、様々な角度から見られそうだから。お役に立てたら幸いです。
>みほっちさん
セミナーにご参加いただいているのですね、ありがとうございます。明るく華やかなのは獅子座の特性(?)かもしれませんが、その印象は嬉しいです。
今度セミナーにいらした時は、ぜひ声をかけてくださいね!
>カトウさん
ものすごく頑張っている風で、結構手や気を抜いてたりするんですよ。(笑)
好奇心は脳の老化防止にもなるとのこと、カトウさんもぜひ!!
>かほるさん
変化に適応しやすいのは女性の特性だと思います。姓が変わっても、母となっても、女は強いでしょ? その日が来たら何とかしちゃえるのも女性、きっと大丈夫です。(^^)\
>こむぎさん
お仕事をこなしながらの義理のご両親との同居、こむぎさんこそいろいろご苦労がおありなのではないかと思います。私はたまにしか行けない距離なので、夫の実家ではお姫様のように大事にしていただいていますが。(これがいい息抜きになります、義父母に感謝!)
次世代の大人となる子どもたちには、ネットは無限大の可能性を持っています。こむぎさんが知っている知識や善悪・危険or安全の判断材料などを、ぜひぜひ、お子さんの年齢に応じて楽しく会話しながら伝えてあげてください。可能性がグン!と広がること、私が保証します!! (^_-)-☆
出遅れましたが、コメントを・・・。
子供とネットの関係、同居中の実母の近い将来について、共に意識外に追いやっていた私ですが、今回のインタビューで自ら目を向けるきっかけを頂く事ができました。負の力は大きなジャンプアップに繋がる事もある・・・心に留めておきたい言葉です。
尾花さんからのレスの1つ1つにも重みがあり、お人柄が感じられました。尾花さん、らむねさん、素敵なインタビューをありがとうございました!
春から年長の子がいるので、受験や小学校生活に関するご意見、そしてメディアリテラシーの重要性についても、とても参考になりました。
私の母も、親を介護していたのでわかりますが、言葉で表現できないくらい、本当に大変な日々を過ごされてきたことと思います。でも、それすら貴重な学びの機会と考える尾花さんの前向きさに、頭が下がります。
弓は、後ろに引くことによって、矢を遠くへ飛ばす----確かにそうですね! 励まされました。
出産前後から子供が保育園児の頃、尾花さんには本当にお世話になりました。いつも励まされっぱなしで何のお返しもできておりませんが^^;
先日、ある女性活用セミナーで、たくさんの女性(育児真っ最中の方から予備軍の方まで)の前でお話させていただく機会があり、みなさんの真剣な表情といただいたアンケート結果を見るにつけ、やっぱりロールモデルって必要だなぁと痛感した次第です。
引き続きコメントありがとうございます!
>マオさん
頼りになる反面、甘えてしまいがちなのも実の母娘。お元気だったとしても、歳を重ねると精神的な甘えが出てくるかもしれませんが、人間、年を取れば子ども返りするもの!と割り切れば苦労も軽くなります。ステキな親子関係が続くことを祈っています☆
>瑠奈さん
もうじき、幼児期最後の1年に突入ですね。この時期の親子が向き合いたいのは「ヒューマンリテラシー」だと思っています。考え方、お付き合い、決まり、お行儀など、人としてのリテラシーをいっぱい感じられる1年でありますように。
>千早都さん(ご無沙汰でした!)
今は、「ああなりたい」という遠い目標的なロールモデルではなく、「ちょっと先を歩いてくれる身近な先輩」というロールモデルの存在が嬉しいのかも。先が見えない時代だからこそ、霧深い山道のドライブと一緒(?/笑)で、遠くの目標地よりも、少し前を走る車の存在が必要なんでしょうね。(^_-)-☆
今日になってこの記事に気がつきました。
kikoさん、お懐かしいです。
ずっと以前、パソコン通信でお話させてもらっていました。(覚えていらっしゃらないかもしれませんが・・・)
その頃から色々と大変だったのですね。
私はまだ直面していない介護の問題、どうしても避けて通りたい気持ちになりますが今から考えておかなければなりませんね。
お会いした事はないけれど、久しぶりにお会いして素敵にご活躍されている様子をみることができた気分でうれしいです。
>ちゅうりっぷさん
覚えていてくださって、とっても嬉しいです。ぜひ、見かけた時は声をかけてくださいね♪
介護は「誰もが必ず通る道」ではありませんが、いざ!という時に慌てないように考えておくことをお薦めします。決して無駄にはならないと思いますから。(^^)
>みなさまへ
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