二〇〇四年秋、突然社長から呼ばれ、私は品質管理責任者に任命されてしまいました。それも、外国企業で、外国人の部下数名の面倒を見なければならないのです。日本語の能力はほとんど要らず、ドイツ語と英語の能力が必須。携帯電話ゲームの品質を保証しないといけない立場なので、テクニカルな知識も必要。なにもかも初めてづくしで、山のように大きな不安を抱え、最初の一年は「私は適任ではない。だれか他の人がするべきだ」と、泣きながら仕事をしていました。
就任して二年が過ぎ、今では、中間管理職として、上司と部下の間にはさまれ、開発者や営業チームやもう一人のQAマネジャーと激論を交わし、日本や外国のビジネスパートナーのケアも行い、終わらない仕事をどうにかこうにかこなす日々を送っています。
ワーキングマザーの私が、なぜQAマネジャーに選ばれたのでしょうか?
言葉の達人でない私が、今も責任者として働き続けることができるのは、どうしてなのでしょうか?
自分の体験から、次の3つのポイントを挙げたいと思います。
(1)上司・部下・同僚と信頼関係を築く(コミュニケーション能力)
仕事をしていく上で、人間関係は本当に重要です。相手を信頼し、相手から信頼され、そういう人間関係を築くことができなければ、仕事を長く続けていくことは難しいでしょう。得に、外国企業の場合、いろんな国の人たちがいます。自分の考えをオープンに外国語で相手に伝えないと、コミュニケーション不足が生じてしまいます。このコミュニケーション不足が原因で、仕事がうまく進まないことは、よくあることなのです。
信頼関係の築き方は、「あいさつ」と「ショートトーク」から始まります。なんでもいいのです。「おはよう。元気?今日は暑いね」とか言って、相手に話しかけるのです。こちらは、あなたとコミュニケーションを取る準備が整っているんですよとアピールするのです。
簡単なことですが、この「あいさつ」と「ショートトーク」は、良好な関係を築くための第一歩になります。
そして、「ショートトーク」することによって、相手の仕事の状態やプライベートな状態がわかるので、何かアドバイスすることができるかもしれません。逆に、困っていることを伝えて、アドバイスしてもらってもよいのです。相手が困っているときに助けてあげることで、更なる信頼関係を築くことができます。
こんな風に、会社のいろんな人たちと、友好関係を築くことによって、仕事を本当にスムースに進めることができるようになります。なぜなら、コミュニケーション不足から発生する問題に悩まされる必要がなくなるからです。つまり、「仕事」だけに集中できるようになるという意味になります。
(2)与えられた仕事を正確にこなす(処理能力)
仕事は大小ではありません。大きい仕事や小さい仕事に関係なく、ミスのないように処理することが大切です。私はQAマネジャーをするまでは、アシスタントの仕事しかしたことがありませんでした。しかし、多岐に渡るアシスタントの仕事を、上司を立てながら正確にこなしてきたおかげで、それまでの仕事ぶりが評価され、責任者の立場になることができたのです。みなさんは、私が元々マネジャーを目指していたと思われているかもしれませんが、そうではありません。アシスタントの仕事が自分に合っているとずっと思っていました。今回の会社の人事によって、自分の中に埋もれていた新しい能力を引き出すことができたのです。
与えられた仕事を、心なしで片付けてはいけません。何か資料を作るにしても、ちゃんときれいにできているのか、丹念に工夫する必要があります。誰にでもできる仕事ぶりではだめです。外国では特に、先手先手を打って、自分だけの仕事のスタイルをアピールしなければなりません。「使える」と思ってもらわなければならないからです。
そして、一番大切なのは、「わからないことがあれば質問すること」です。少しでも不安な部分があれば、上司や同僚に尋ねるのです。
外国では、「失敗する前に聞け」と良く言われます。「尋ねるのはお金がかからない」というドイツ語のことわざまであるくらいです。ミスなく正確に仕事をこなすことは、外国企業で働く上で、本当に大切なことと言えます。
(3)タイムマネージメントを身につける(時間管理能力)
仕事を時間内にこなすためには、時間を有効に使わなければなりません。そのためには、優先順位を考えたり、空き時間を使ったり、同時に複数の仕事を処理したりと、時間の管理が完璧にできるようになる必要があります。得に大切なのは、「優先順位」です。この優先順位を間違えてしまうと、とんでもないミスにつながる可能性があるからです。自分の仕事の優先順位がわからなくなったら、上司にすぐに尋ねましょう。上司とは、常にコミュニケーションを図り、プロジェクトの進捗状態を伝えることも大切です。つまり、情報の共有です。
仕事の期限も、常に尋ねた方がよいでしょう。上司から、「これやっておいて」と言われたとき、「はい、わかりました」だけではだめです。「いつまでにすればよいのですか?」と、必ず「期限」を尋ねることをお勧めします。
私は最初、外国企業に勤め始めたとき、質問すると「仕事ができない」と思われるのではないかと思いこんでいたので、何かを質問することができませんでした。「はい」としか言えなかったのです。それくらい自分に自信がありませんでした。しかし、上司から「わからないことがあれば聞け」と言われて以来、なんでも尋ねるようにしています。尋ねても怖くないことがわかったからです。
私は電車2つとバス2つを乗り継いで、会社と家を往復します。この2時間の通勤時間は、私にとって本当に貴重な時間で、翻訳、ゲームのテスト、長文メールを読む、数十ページの英文ガイドラインの解読等の仕事を処理してきました。つまり、空き時間を利用して、本当にたくさんの仕事がこなせるということになります。
時間をどうやって使うか、または使えるかは、その人次第です。与えられた仕事を、期限内にこなす。簡単なようで、一番難しいことかもしれません。得に、仕事が複数になって、同時進行させなければならない場合、なおかつ、期限がバラバラな場合、本当に時間を有効に使うことが求められます。
仕事をしていく上で、「無駄な時間は一切ない」と断言できます。「無駄な仕事」はあっても、「無駄な時間」はないのです。
子供を持つお母さんは、これらの3つの能力「コミュニケーション能力」、「処理能力」、「時間管理能力」を基本的に備えられていると思います。
親戚づきあいや近所づきあいや、もちろん、子供の保育先の先生との関係を良くするために、コミュニケーション能力は毎日鍛えられていると思いますし、家事を時間内にこなさないといけないので、処理能力や時間管理能力も毎日鍛えられていますよね。
私は、働くお母さんたちがもっと増えて、どんどんマネジャー業に就かれることを願っています。共に苦労を分かち合いたいからです。
今回の記事が、みなさまの「気づき」になれば、とても嬉しいです。
みどりさんの今回のプログを見て私が キリスト教系で仕事してる時を思い出しました。
欧米人が マネジメントでくると日本の習慣や流儀やいろいろわかってると やりやすいんですけど外人だからわからないところもあると悪口をよく言ってました。
分からないことは、間違う前に聞きなさいとか言われてました、
日本人社会では、一度きいたことを二回以上聞くと嫌がられたりすることは、多いし 仕事について提案しても古い人の手前上 言えないこともありますよね。
会社によっては、仕事についてのインタビューもあるので その時に私は、はっきり言いますけど 人によっては、何か言ったことで辞めさせられるのでは 不安だから我慢してる人もいるようです。
はなさん、いつもコメントありがとうございます。
そうですね。外国で仕事するスタイルと、日本で仕事するスタイルは、全然違うと言い切れると思います。
以前、ドイツの日本系の組織にいたのですが、そこは外国スタイルではなくて、日本スタイルでした。そのため、日本の外国企業で仕事したとしても、外国スタイルではなくて、日本スタイルが要求されるかもしれませんね。
その場合、私が今回書いたポイントは、外国にある外国企業でのみ通用するということになりますね。新しい発見をありがとうございました。
さすがみどりさん!ビジネスマンとしての仕事に対する心得が凝縮してまとめられていると思います。十分、日本でも通じる「法則」ですよ。中でもタイムマネジメントは、なかなか難しいですよね。ついつい目先の仕事を片づけたり、嫌な仕事を後回しにしたり・・・「優先順位」をつけるのって本当に難しい。みどりさんの仕事に対する姿勢、いつも見習いたいと思うことばかりです。思うばかりでなく、実践しなくちゃね。
かほるさん、コメントありがとうございます。
日本でも十分通じる法則とおっしゃってくださってありがとうございます。
なんだか、的外れなことを書いたような気がしていましたので、、。
タイムマネジメントは、本当に難しいです。ご指摘のとおり、優先順位が一番難しいですよね。この優先順位を間違えてしまうと、仕事に遅延が発生して会社に大迷惑をかけるところまで発展する可能性もあるので、私は責任者として一番注意しています。