ワーキングマザースタイルインタビュー第17回目は、カフェグローブ 矢野貴久子さん




2007年11月12日

インタビュー第17回目は、カフェグローブ 矢野貴久子さん

Posted by 村山らむね

大人気女性サイト カフェグローブの代表取締役矢野貴久子さん。成功されたIT業界の女性社長として大活躍でいらっしゃいますが、もうすぐご出産の予定です。これまでのキャリアの経緯や、45歳でのご出産を控えてのご心境。そして、カフェグローブの新しいカテゴリー“ペアレンティング”に込めた思いなどをお聞きしてきました。

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■編集者から一転、医学部受験、そしてインターネットとの出会い

- 輝かしいご経歴の中で、医学部に挑戦されているというのが昔からとても興味深かったのですが。

矢野貴久子さん(以下矢野さん):ちょうど27、8のぐらいだったと思います。当時編集の仕事をしていて、若気の至りではないんですが仕事のことが一通りわかった気になったんですね。それと、。私の大きなテーマとして、一生仕事をし続けたいという希望がありました。編集の現場の仕事を、50才、60才になっても続けられるのかなって漠然と不安に思ったんですね。まあ、自分探しをしていたんだと思います。天職探したいなというモードに入ったんですね。それで短絡的なんですけど、一生続けるなら資格が必要な医者か弁護士かなって。本当に短絡的ですよね(笑)。

- 正直、ほんの少し短絡的と思いますけど(笑)、でも受かってしまうのがすごいですよね。

矢野さん:私、理数系は全然苦手だったので厳しい予備校に入って。

- 両国予備校ですか?

矢野さん:そうです。さすがに寮には入りませんでしたけど、朝6時から夜中まで勉強しましたね。正味8ヶ月くらい。あんなに勉強したのは後から先にもありませんね。自分がどれだけ出来るかを試してみたかったというのもあります。もちろん医師になりたかったんですよ。

- 医師を志されたきっかけみたいなものはおありなんですか?

1985年 22歳 株式会社日経BP入社 
          退社後フリーライターとして活躍
1991年 29歳 医学部受験
1993年 31歳 結婚
1998年 36歳 離婚
1999年 37歳 TBSブリタニカ 入社 退職
1999年 37歳 カフェグローブ立ち上げ
2003年 41歳 結婚
2007年 44歳 妊娠

矢野さん:編集をやっていたときにターザンがメインの仕事で、お医者様や大学の医学部の先生に取材をすることが多かったんですね。研究対象の尽きることのない深さとか、医療の現場の大変さとか、そのもろもろを見ていて私も引き込まれちゃったんですね。とても立派な先生って謙虚だったり、人間的にも魅力的だったり。こういう風になりたいなと、憧れてしまったんでしょうね。

- その猛勉強というご経験は、カフェグローブ立ち上げにも役に立ったのではないでしょうか?

矢野さん:そうですね。私、変など根性があるんです、きっと。やらないときは全然やらないんですけど、やるときはホントとことんやります。編集の仕事をやろうと思ったときも中途採用はどこも落ちてしまったんですね。だからフリーで始めたんですけど、経験がないのにフリーと言ってまわって。門前払いされたり散々な思いをしましたが、そのときも最低三年間はと、気合を入れましたね。もうちょっと要領のいいやり方もあるのかもしれませんが、ど根性勝負なところがありますね。

- 結局、医学部には進まれなかったんですね。

矢野さん:その年は私立しか受からなかったんです。本命は国立で、経済的にも私立の医学部にはとても進学できる余裕がなかったので、私立への進学はあきらめました。親にも「家を売るのか?」と泣かれてしまって。もう一年チャレンジしようと、予備校もお金がかかるのでやめてZ会の通信教育に切り替えました。お金も一年目の受験でけっこう使ってしまったので、ちょっとアルバイト的に仕事も再開したんです。でもね、仕事ってオールオアナッシング。都合よく仕事するなんてできなくて。復帰したとたん、たくさん仕事をいただいてしまって。結局Z会に答案を提出できたのは最初の3ヶ月くらいですね。優柔不断な私は、仕事のほうにずぶずぶと引きずられて気がつくと、編集中心の毎日を送っていました。

ちょうどその頃に結婚(1回目)をしたり、『世界で働く日本人女性』という、まさしくカフェグローブを立ち上げるきっかけになった特集に携わったりしているうちに、医学部普通より10年遅れてトライしたんだし、20年遅れてもいいかなと。それなら若いときにしかできない仕事、若いときにしか声をかけてもらえない仕事に邁進しようと思ったんです。

- その後、カフェグローブを立ち上げるまでに何か大きなターニングポイントはあったのでしょうか?

矢野さん:離婚が大きかったと思います。今でも、彼とは仲がいいんですが、友達のまま結婚して、友達のまま離婚した、そんな感じです。その頃は子どもが欲しいとも思わなかったし。1年くらいとことん話し合って、納得して別れました。

- とても丁寧な人間関係ですね。

矢野さん:そうですね。今でも本当に尊敬しています。

- その前後にも雑誌の創刊などに数多く携わっていらっしゃいますよね。

矢野さん:離婚してさすがに稼がなきゃ生きていけないので、仕事バリバリやって、個人事務所を作ったり。あと、ずっとフリーランスで関わっていたフィガロジャポンのTBSブリタニカ(現・阪急コミュニケーションズ)の方から「社員として来ないか」と誘っていただいたんです。

ちょっとさかのぼりますが98年頃から、カフェグローブの元になる構想を企画書にまとめて雑誌社にプレゼンするなんてことをやり始めていました。最初は雑誌でやろうと思っていましたから。でも「働く女性に興味はない」「広告媒体としていかがなものか」と、あまり色よい返事はなかったんですね。それで、「まあいいか、まだ時期じゃないんだな」と。雑誌を1冊面倒見る経験をしたことがなかったこともあって、TBSブリタニカにお世話になることにしたんです。このへんはアバウトですよねぇ。

- 後から見ると全然アバウトな感じではなく、筋道が立っていますよね。

矢野さん:こじつけているのかも(笑)。でも申し訳ないことに、1999年の2月に入社して、6月にシンガポールに住んでいる友人に「あの企画インターネットから始めれば実現できるんじゃないの?」って言われて。それで週末シンガポールに飛んで話を聞きに行きました。編集者の友人で後に創業メンバーとなる青木に相談したら「留学するまで手伝うよ」(その頃青木さんは留学を計画していらした)って言ってくれて。

それで話がどんどん進んでいろいろとやっていくうちに、フィガロジャポンの編集とサイトの立ち上げの両方は無理だと。それで本当に申し訳なかったのですけど、入社8ヶ月で辞めさせていただいたんです。それでカフェグローブを立ち上げたんです。

■成功の秘訣はあきらめないこと。それに尽きます。

- それでカフェグローブが立ち上がったのが、何年ですか?

矢野さん:1999年です。とにかく早くやらなきゃって。1999年のうちにどうしてもオープンさせたかったので、オープン日はぎりぎりの12月20日。なぜか私の中で「2000年では駄目、1999年にオープンさせる」という強い思いがあったんです。

- 「世界で働く日本人女性」というコアなコンセプトから、今では政治経済からファッションまで幅広い話題をとりあげ、たくさんの女性に支持される日本で指折りの女性サイトに成長したわけですが、1999年の立ち上げから軌道に乗るまでいろいろとご苦労があったのではないかと思います。どのあたりが一番ご苦労でしたか?

矢野さん:徹夜してコンテンツをアップするとか、そういったことは編集者として経験していたのでそれほど苦ではなかったんですね。もちろんもう徹夜は年齢的にきついですけど(笑)。私が苦労したのはいきなり経営者としての役割をになったので、さまざまなことを判断して進んでいかなければいけないのですが、いちいち勉強しながらで、とても時間がかかった。一つ一つがすべて初めての経験だったのが、苦労でもあり醍醐味でもありましたね。「医学部なんて受けてる場合じゃなかったよ、MBAとっとけよ」と、過去の自分を呪いましたよ。

- 走りながらのノウハウが実は価値があったんじゃないですか?

矢野さん:みなさんにもそうおっしゃっていただくのですが、その頃の私は財務諸表ひとつ読めなかったわけなのでね。スピード感が違うわけです。

- そうは言っても、ネットバブルがはじけた2000年以降も生き残り、かつ大変な人気サイトで、50人近い従業員を抱える企業に成長なさったわけで。あの頃ネットベンチャーに身をおいていた私から見ると、もう生き残っているだけでもものすごいことですよね。ここまで来れた最大の秘訣はなんだと思われますか?

矢野さんあきらめないこと。それに尽きますね。

- 今やっていて一番のエネルギーになっていることは何ですか?

矢野さん:私は編集者を14年やって、ネットは8年なんですけど、編集者自体は読者の声をダイレクトに受け取る機会は少ないんです。売れた部数で反響があったんだなとか、もちろんアンケートもありましたが、リアルタイムではない。見られているページがPVと言う形でダイレクトにわかり、コメントやメールなどでナマの意見をもらい、読者とともにコラボレーションしていくという醍醐味はネットならではのものです。紙の編集だけやっていては決して味わえなかったものですね。既存のマスメディアの要素も兼ね備えており、かつ、ビジネスの広がりが無限のインターネットというツールとしての魅力にもわくわくさせられます。

- 一時期たくさん女性サイトができたじゃないですか。そのなかでスタートからのコンセプトを大事に現在まで生き残り、かつ熱い支持を得ているのはカフェグローブさんくらいかなと思うのですけど。自ら育て続けているところがすばらしいですよね。

矢野さん:ありがとうございます。

- カフェグローブの魅力のひとつに読者の方々の質の高さがあると思いますが、いかがですか?

矢野さん:質が高いという言い方が適切かどうかと思うのですけど、意識は本当に高いですね。世の中も良くしていきたい、自分自身も高めて行きたいという思いがありますね。女性の関心ってファッションや美容だけではないと思うんですよ。これからは政治経済も知らないと、自分の選択肢をどんどん狭めてしまうと思うんですね。選択肢が多いなかで自ら選び取れる人になりたいというのが当初からのコンセプトにあったので、知的好奇心の強い人ってこんなコンテンツに興味をもつんじゃないかという仮説を立ててはじめたら、実際、そういうユーザーの方々がついてきてくださったと思います。現在、ユニークユーザーで40万人ですね。

- 私はショッピングサイトのコンサルタントをしてもいるのですが、「今、女性にリーチしようと思ったらカフェグローブくらいしかないね」という話によくなります。それほど、圧倒的に女性サイトとしての地位を築いているということかと思います。先日は、Diorの大きな広告が表示されていましたが、ブランドを大切にする外資系の化粧品会社から信頼されると言うのはネットメディアとしては大変なことかと思います。

矢野さん:やっとですよね。でもまだまだ成功というには早いんですよ。


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身につけていらっしゃるのはセレクトカフェでも大人気の女優スーツと、クリスマス限定販売のダイヤモンドジュエリー

■不妊治療の末の妊娠、そして出産への思い

- 二度目のご結婚は?

矢野さん:41歳のときです。

- 40歳になるときは何か感慨はありましたか?

矢野さん:あんまりありませんでしたね。自分が40になることなんてどうでもよくて、会社を成長させることのほうが重要でしたから。

- 私は結構、心理的に抵抗がありましたね(笑)。年齢を聞かれて、咄嗟に40歳と出なかったり。

矢野さん:私は8月が誕生日なんですけど、年が明けると「今年、○○才になります」と、もう加齢しちゃうんです。今は45歳だから四捨五入したら50代。年取るのはしょうがないし抗えないので、楽しい50代にしようと考えるほうですね。

- 二度目のご結婚のきっかけは?

矢野さん:実は、メーリングリストで見つけた人なんですよ。創業当時、米国人の技術者がサイトのシステム構築をしてくれたんですが、ちょっと特殊なツールを採用してしまったんですね。それでなかなか日本でアドバイスをもらえる人がいなくて、そのツールに関するメーリングリストを探し当てて、「助けてください」と投稿したら、助けてくれた人がいて。それが出会ったきっかけですね。もちろん、結婚はずっとあとのことなんですが。

- 現在妊娠中ということですが、今回はお子さんが欲しいなと思われたんですか?

矢野さん:実は40歳の時に、婦人科系のガン検診のついでにいろいろ調べてもらったんですね。そうしたら「無排卵月経」と診断されて、「あっ、このままだと子どもが持てない」と、自覚しました。そのときから不妊治療を始めました。最初はクリニックで漢方を飲むなど1年位しっかりやったのですけど、妊娠には至りませんでした。

DSC03890.jpg治療自体もステップアップしたほうがいいという先生のアドバイスもあって、不妊治療を本格的にやっている総合病院を紹介していただきました。ただ、42歳くらいでものすごいストレスになってしまったんですね。時間的な負担というよりも、できない自分に焦りみたいなものを感じて、こんなにストレスが溜まるのならやめてしまおうと、とりあえず中断してジムで体を鍛えたりしていました。少しでも前向きのほうがいいかなと。

「ああ、もうぎりぎりタイムリミットかな」と再びその病院に駆け込んで。「2年あいちゃったのですけど、どうでしょう」と診ていただいたんです。そうしたらFSHというホルモン(卵胞刺激ホルモン)の数値がすでに治療の限界レベルまで上がってしまっていて「ここまで上がってしまったら、排卵誘発剤が効かないからあきらめましょう」と、先生に言われてしまい…。そうしたら無性に悔しくて、「先生、私まだ最後のステップの体外受精はやっていただいていないんです。あきらめるためにも1回だけやらせてください」と頼み込んだんです。先生も根負けしたのか「それなら卵子はたくさんはとれないけどクロミッドを使うというやり方があるから、やるなら早くやろうか」と、おっしゃってくださって、そうしたらできたんです。

- おめでとうございます。(拍手)

矢野さん:あのときやらないでいたら、その後悔って、一生つきまとったと思うんですね。やってダメならすっぱり諦めようとは思っていましたが。やらなくてできなかったという後悔をしたくなかったんです。

- あきらめないってすごいことなんですね。

矢野さん:子どもをいつか育てたいと言う思いは、二度目の結婚をしたときからずっとあったんですね。自分の子どもが出来ないとはっきり諦めがつくのであれば、養子ということも視野に入れて次のステップに行けるじゃないですか。次のステップに行くためにも、自分では産めないということにケリをつけたかったんですね。

- 子どもを育てたいというお気持ちはどんなところから?

矢野さん:家族を作りたかったんですね。彼も子どもを欲しがっていたし、産めない自分が申し訳ないなという気持ちもどこかにありました。(自分のほうが)年上ということもありましたし。子どもを育てる新しい体験をしてみたいというのも純粋にあったので、究極は自分の子どもにこだわらなくていいと思っていたんですよ。もちろん優先順位としては、自分と彼の子どもがほしいなというのはありましたけど。

ただ、ずっとできない側にいたので、産みたくても産めない人の気持ちがよくわかるんです。だから子ども至上主義にはなりたくないんですね。

- 私などはワーキングマザースタイルというどちらかというと産んだ人に限定しての情報提供をしてしまっているのですが、世の中には産みたくても産めなかったり、産まないという選択肢を積極的に選んだ人がたくさんいるわけで、そういう人たちの気持ちも尊重しながら、ご自分の経験を生かされた情報提供が実現するといいですね。バランスのとれた情報提供がきっとカフェグローブでは実現するのではないでしょうか?

ただ、矢野さんが45歳でご出産されると言うことが世の中に与える影響ってすごく大きいですよ。40歳過ぎて「もう駄目かな?」と漠然と思っている方って多いと思うんです。そういう方々に、大きな勇気を与えてくれると思いますよ。

矢野さん:もちろん、いろいろなリスクはあると思いますが、自分にとっての選択肢は多いほうがいいと。選択肢は多いほうがいいと。

私の場合、あまり40歳を意識しなかったんです。だから40歳前後を無駄にすごしてしまったという反省がありますね。不妊治療を中断したときは知らなかったんですが、低容量ピルを飲むことを選択して排卵を止めて卵子を温存しておけばよかったんじゃないかとか、もっと早く体外受精に挑戦すればよかったなとか。真剣に勉強しておけばよかったなと思いますね。自分が経験して初めて、生殖とか自分の体についての知識って、意外とお粗末なんだとわかりました女性誌の編集者やっていて、情報収集はそれなりにしていたはずなのにこのレベルですから。しかも学校で教えてくれるわけではありませんからね。

- 一番重要なのに、なぜか誰も教えてくれていませんよね。

矢野さん:パートナーはもっと知りませんから。女性は子どもが欲しいのに、人工授精や体外受精といった生殖補助医療をかたくなに拒む男性もいると聞きます。もちろんそういう価値観があってもいいとは思いますが、意外と知らないだけということもあるのではないでしょうか?

- なかなか不妊などの情報は表に出にくいと言うのもありますよね。

矢野さん:私も体外受精というのは妊娠したすぐは、社内でも言っていなかったんです。たまたま妊娠がわかった頃に、日本で初めて体外受精で誕生した女性が出産(※たしか出産だったと思います)したというニュースがかなり大きく出ているのを見て、体外受精ってまだそんな特別なこととして見られちゃうの?と少しびっくりしたんです。ただ調べたら、すでに年間1万8千人もいて、日本で誕生する赤ちゃんの60人にひとりは体外受精と聞いて、なんだそんなにいるんだって安心しましたけど。ほんの一瞬躊躇しましたが、いまはオープンにしています。

- 妊娠なさって意識が変わったこととかありますか?

矢野さん:実感して初めてわかることがたくさんありますね。女性の多い会社の社長として、社員の産休や育休については対応してきているんですが、たとえば、会社に横になれるスペースがあれば、安心して出社できるなとか、自分が当事者になってみてはじめてわかることもあるんだなとつくづく思いますね。

- 少子化対策も年金をもらう立場の人たちが当事者となって考えているから、私たちとギャップがあるんでしょうね。

矢野さん:どうして産まないのかという理由を考えていませんよね。育児参加をしていない男性中心の政治の世界では限界がありますよね。もっと幅広く経験者も含めて政策を提案させるとかしないと、産むことに対しての当事者からかけ離れた政策論議になってしまいますよ。

- あとは1人産んだ人が2人目、2人産んだ人が3人目を産みやすい環境を作るのも重要かなと思います。会社に勤めながら3人目が産めるってなかなか難しいと思うんですけど、それが可能になるといいなと。

cafe.jpg■新カテゴリー“ペアレンティング”をオープン

- 今後の夢をお聞かせいただけますか?

矢野さん:夢と言われると難しいのですけど、一番のミッションは会社を成長させていくことですね。それと育児をどう両立させるかというのもありますが、どちらも楽しんでやるということくらいしか今は考えていないですね。社長だけが音頭を取ってばりばりやればいいという規模ではそろそろなくなっているので、組織として動ける仕組みづくりを進めていければなと考えてすでにいろいろ進めています。

せっかくこんなに遅くに子どもを授かりましたから、楽しく育児をしながら、これからの後半の人生はいろいろなことに挑戦していければなと思っています。今はこれくらいで実際に生まれてみたら大変だと思うんですけど。

- 矢野さんは大変楽しく育児されると思いますよ。

矢野さん:私が妊娠したからというだけではないんですが、今年の春くらいから編集スタッフたちが妊娠・出産・育児関連のコンテンツを準備してきました。みんな、「私も将来子どもを持ちたい、けれど持てるのかな?」という漠然とした不安を抱えているようなんですね。

社内でも毎年産休取得者がいますし、現在は2人目の出産で産休をとっている社員が2人いるなど、出産しても働きやすい会社作りというものを強く意図しています。また、カフェグローブユーザーの方々も子どもを意識し始めていることもあり、ユーザーに向けて何か発信できないかと考えたわけです。「いつ産むか?」「私は産める体なのか?」という読者の最大の関心事も含めて。

11月9日に“ペアレンティング”というものをテーマにした新しいカテゴリーをデビューさせます。対象は、これから産もうと思っている人、すでに子どもを持っている人、それからもちろん男性、そして子どもはいないけれど、なにかしら社会を通じて子どもと関わって行きたいという方。そんな方々に向けて“ペアレンティング”(parenting)というものを考えていけるきっかけしたいということで、あまり近視眼的なものにならないコンテンツにしてければと考えています。

元フジテレビのアナウンサーだった政井マヤさんをスペシャルエディターとしてご迎えて、出産・子育てに関わるジャーナリスティックな発信をしていただこうと考えています。世の中にペアレンティングという言葉を普及させたいなと。

ワーキングマザーとかママコンテンツというよりも、社会的に子育てを考えるということをカフェグローブではやりたいかなと考えているんです。

- 確実にステップが上がっていますね。

矢野さん:産まない、あるいは産めない方々もいらっしゃるわけですが、子どもへの関わり方はこれから本当に多様化していくと思いますし、それがparentingという言葉に凝縮されるような気がします。不妊治療にしても、基本は自分の体をベストな状態にもって行くための治療だったりするわけですよね。

- 自分の体との対話を割と軽視しがちですものね。

矢野さん:選択肢は多いほうがいいですから、将来産みたいと思うのであれば、そのなかで産める体作りとは、という意味での“ペアレンティング”ということにも焦点を当てていきたいなと考えています。

- 産まないという選択肢をとった人が居心地が悪くなることなく“ペアレンティング”を伝えると言うのはとても難しいことだと思いますが、カフェグローブさんならすごく上手に出来る気がします。

矢野さん:夫、妻、子どもという、いわば当たり前の家族もあれば、シングルマザーやシングルファーザーの家庭もある。自分で子どもを持たなくても、仕事で子どもと関わるということも含めて、もっと広く社会で子どもを育てていくというような視点でつくっていければと編集部も張り切っています。

- とても期待しています。本日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。

カフェグローブ

セレクトカフェ
カフェグローブのセレクトショップです。矢野さんがお召しになっている女優スーツ胸元のダイヤモンドジュエリー、そして3WAYのクラッチバッグ。どれも大人気のオリジナルアイテムだそうです。

朝と夜のあいだに | カフェグローブ
矢野貴久子さんのブログです。


●インタビューを終えて

太陽のように明るくて、起業家としての明確なリーダーシップを感じさせながら、女性としての細やかさも伝わる本当に魅力的な女性でした。不妊治療についてもさばさばとおこたえいただき、これをお読みになったいろいろな立場のたくさんの方々が、とても元気になるのではないかと思います。矢野さんが母になることは、たくさんの女性たちを間接的に幸福にしていくのではないかと、心から期待し確信しています。本当にありがとうございました。(村山らむね)






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コメント

矢野さん、はじめまして。夢中で読みました。私も体外受精での出産ですので、とても共感しました。最初のうちはちょっと気にしましたが、今では、まったく気になりませんし、意外と多いです。周囲にも。
初めてのお子様、どうぞ楽しい子育てをご経験ください。

Posted by: さえこ at 2007年11月12日 23:10

私と同い年の矢野さん、私にできない(できなかった)ことをすべてやってらっしゃる感じで、本当にスゴイと思います。矢野さんのような方が本当のIT女社長と呼べるロールモデルなんだと思います。女性としても経営者としても刺激を受けますね。
でも「変など根性がある」というのはちょっと共感、それから人より遅くても早くても自分の尺度で考えるという姿勢にも共感します。
45歳での出産、本当に応援します。私は今年20歳の娘がいますが、今になってもうひとり産みたかったなぁなんて思っています。

Posted by: ゆり at 2007年11月13日 02:12

矢野さんの「あきらめない」という言葉に、はっとさせられました。無意識のうちに、いろんなことをあきらめていたような気がします。
ペアレンティング・・・素敵な概念です。ご出産なさっても、きっと、なにごともあきらめない矢野さんでいらっしゃるんでしょうね。元気な赤ちゃんのご誕生をお祈りしています。そして、またいろんな楽しい経験をなさってください。
素敵なインタビュー、ありがとうございました。

Posted by: かほる at 2007年11月13日 09:09

矢野さんの、美しくてとても輝いていて仕事もきっちりと成功されていて、女性としても経営者としてもとても憧れます。
「あきらめないこと。それに尽きますね。」の言葉にはじーんときました。
私にも、今あきらめたくないものがいくつかあります。
このインタビューにとても励まされました。
いつも素敵なインタビュー、本当にありがとうございます。

Posted by: みほっち at 2007年11月13日 19:50

矢野さんの美しさは、内側から輝いておられるからだということが、インタビューから伝わってきます。
日々、いろんなことをあきらめてしまっている自分を反省しました。
ペアレンティングという考え方、今の日本にとても欠けていて必要なことだと思います。
社会を通していろいろな形で子供とかかわり育てていくという考えが広まれば、少子化もきっと変わってくると思います。

Posted by: りこ at 2007年11月14日 09:24

「養子も考えていた」というお言葉に、さすが、視野の広いカフェ・グローブを引っ張る矢野さん!と思わず嬉しくなってしまいました。私もこの前、たまたまカフェ・グローブの「ペアレンティング」をのぞいてきたところなのですが、子供のいる人もいない人も意見や情報があれば声を上げられる、という雰囲気がとてもよかったです。日本の社会全体が、もっとこういう風になればいいなと心から思います。

ご無事のご出産をお祈りしつつ、これからのご活躍、本当に楽しみです。刺激的で素敵なインタビュー、ありがとうございました!


Posted by: カトウ at 2007年11月14日 09:27

「やらなくてできなかったという後悔をしたくなかった」という言葉に反応してしまいました。本当にそうだ!とうなずいてしまいました。
初めての出産・育児、矢野さんならではの楽しみ方でクリアされていくんだろうな。とてもワクワクしてきます。そして「社会的に子育てを考える」という素敵な概念をも育ててください。とても期待しています。
素敵なインタビュー、ありがとうございました。

Posted by: ひろみ at 2007年11月15日 01:32

矢野さん、ステキなインタビューありがとうございました。年がとても近いのに、私とまったく違うすばらしい矢野さん。

でも共通点が2つありました!
★やらなくてできなかったという後悔をしたくなかったんです。

私も「やらなかった後悔はしたくない」がモットーです。

★クロミッドを使っていた。

不妊治療をしていた時も使っていましたが、最近も生理の乱れを直すために使っていました・・・^^;

あかちゃんの誕生、楽しみですね。

>自分が当事者になってみてはじめてわかることもあるんだなとつくづく思いますね。

すでに矢野さんは完璧ですのに、これからまたまたパワーアップされますね!
元気の出るインタビューありがとうございました。

Posted by: こむぎ at 2007年11月15日 07:56

一気に記事をよみました。
98年ごろは、「働く女性はフォーカスを浴びていなかった」というくだりに、思わず「そうそう」とうなずいてしまいました。
そういう中で、自分らしく働いてこられた矢野さんのお話は同世代の働く女性として、とても共感をもてました。と同時に、同じ時期にサラリーマン社会で働いてきた私には、矢野さんが仲間に思えて(えらそうですみません!!!)嬉しくなりました。
「ペアレンティング」は、ポジティブなイメージが持てる言葉なので、浸透していくといいな、と思います。
不妊治療で体験されたこと、私には想像もつきませんが、体験しているからこそ発信できるメッセージがいっぱいあると思います。私のまわりにも不妊治療で悩んだりしている人がたくさんいます。
そいういう人たちに向けて、情報交換できたり、勇気づけられるような場所が出来ていくといいなぁと思いました。がんばってください。


Posted by: ゆめ at 2007年11月15日 08:59

確かに、今でも残っているちゃんとした女性サイトってカフェグローブともう1,2つ位しか思い浮かびません。と言うか、カフェグローブこそが、「女性サイト」という概念を作った、と言った方が正しいかも。
45歳でのご出産は、ジャガー横田さんに続き、女性に勇気を与えてくれますね。
カフェグローブの新たな幕開けになるのでしょうか。楽しみです。

Posted by: 小梅 at 2007年11月17日 21:21

新カテゴリのペアレンティング、拝見いたしましたが、もう、うんうん!そうそう!とうなずくことばかりです!すばらしいコンテンツですね!これからも楽しみにしています。

「子育てを楽しむ」という考えが、最近、私自身にちょっと薄れていましたが、もっとおおらかに子育てしていこうと思えました。

そして矢野さんのブログをのぞいたら・・
ご出産おめでとうございます!!
帝王切開だったようですが、とにかく無事に生まれてよかったですね!

Posted by: ふうこ at 2007年11月21日 13:26

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