ワーキングマザースタイル【シネマ・こむぎスタイル】第35回 クライマーズ・ハイ




2008年07月17日

【シネマ・こむぎスタイル】第35回 クライマーズ・ハイ

Posted by 湯河原こむぎ

クライマーズ・ハイ (堤真一 堺雅人 出演)
現在公開中の「クライマーズ・ハイ」。6月末の試写会に行きました。原作を読んだ上で映画を観た私は、ちょっと納得行かないところがあったりしたので、レビューを書こうかどうしようか・・・と迷いました。でも、やっぱり書きます。とてもいい映画だったから。ぜひ皆様に観てほしい映画だから。

この映画、まず映画を観て、そのあと原作を読むことをお薦めします。必ず原作を読んで欲しいです。

クライマーズ・ハイ (文春文庫)

原作、「クライマーズ・ハイ」は、「半落ち」を書いた横山秀夫の小説です。何年か前から、本屋さんにこの本が並んでいたのは知っていましたが、タイトルからして「登山」の本だと思っていました。だから手にも取りませんでした。

でも、映画館の予告で、この本が、23年前に起きた日航機事故の話だと初めて知りました。そして、俄然興味が沸き、最近この本を読みました。原作を読んだ上で映画を観ました。

1985年8月12日。
「その日」皆様は何をしていましたか?

まだ新婚だった私達。
その日は海に行きました。とても暑い日でした。
その頃はまだアパートに住んでいました。真っ赤に日焼けした私達は、アパートに帰って来てからシャワーを浴び、昼寝をしました。
とても疲れていたので夕方過ぎまで寝てしまいました。「夕飯、外で食べちゃおか。」と車に乗って出かけました。

ラジオをつけていたら「日航機がレーダーから消えた」というNEWSが何度も繰り返されていました。私達は「レーダーから消えたって?バミューダ・トライアングルみたいな事になっちゃったのかな?」なんて笑いながら話しました。

本当にその日の事は、今でもはっきりと覚えています。

この映画は、日航機の落ちた群馬県の地方新聞社「北関東新聞社」の話です。「落ちた日航機」よりも「新聞社」の方に重点がおかれています。

作者の横山さんは、この事故の時に群馬県の「上毛新聞社」の記者で、御巣鷹にも登って、記事を書いたのだそうです。しかも締め切りに間に合わなくて書いた記事が新聞に載らなかったという経験があるそうです。本人の経験に基づく小説だから、リアルなんですね。

この時代にはケータイもパソコンもない。だから、現場を見たら、山を降りて社に戻るか、電話して口頭で伝えるか・・・程度しか伝達方法がなかった。大手の新聞社は無線を持っていたみたいだけど。たった23年前なのに、ものすごくアナログな話ですよね。そんな時代の大事故。

日航機が落ちた後の新聞社のフロアの鬼気迫るやり取りに胃を掴まれたようなような気分でした。本当に緊迫感溢れる画でした。私達が普段、普通に読んでいる新聞が、こんなに緊迫した部屋の中で作られているのか・・・と、初めて知りました。もちろん、毎日そうではないのでしょうが、考えてみれば、毎日毎日締め切り時間との闘いですよね潤オ。考えただけで胃が痛くなりそうです。

私の大好きな堤真一さんが出ています。余談ですが、私は、大好きな長瀬(←TOKIOの)が、年を取った時、将来的に堤真一さんみたいな俳優になって欲しいと思っています。コミカルな演技も出来て、渋い演技も出来る人に。堤さんの熱い演技がとてもよかったです。「ALWAYS 三丁目の夕日」の提さんとは別人!素晴らしい俳優さんです。

それから、らむねさんはじめ、皆様の大好きな家定様の堺雅人さんが出ています。人気ありますよね、堺さん。堺さんは、きっと当時の横山さん本人なのでしょう。堺さんの役はいつも印象的。彼は実際の年齢よりもずっとずっと熟練されていると思います。まだ34歳なんですよね。




この映画を観る上で、非常に重要なキーワードがあります。

それは「大久保連赤(おおくぼれんせき)」という言葉。これはただ、音で「おおくぼれんせき」と聞いても、原作を読んでいないと、何の事かわからないと思います。

大久保は「大久保清」。1971年に群馬で起きた「大久保清事件」の事。芸術家風のカッコをして「絵のモデルになりませんか?」と女性に声をかけ何人も強姦して殺していた事件。
連赤は「連合赤軍」。1972年に起きた「浅間山荘事件」は連合赤軍が起こした事件です。私達が小学生だった当時、浅間山荘に連合赤軍が立てこもり、そこに警察が突入する模様がテレビで生中継されました。それは本当に驚きの映像でした。犯人が立てこもる山荘に鉄の球をがんがんと打ちつけて壊す光景・・・。ほんと今でも覚えています。

この二つは群馬県で起こった大きな事件。北関東新聞社のオヤジ達の中には、未だにこの時の自分の手柄を鼻高々に話すものがいる。この時に書いた自分の記事の切抜きを手帳の間にはさんでいて、酔っ払うと人にそれを見せて当時の事を自慢げに話す・・・そんなやつらが現存する。

御巣鷹の飛行機事故。それは未曾有の大惨事。その現場に行く若い記者。その記者の書いた記事をなんだかんだと理由をつけて一面に載せたがらない、かつて「大久保連赤」を経験したオヤジ達。自分達の栄光を超えて欲しくない・・・というやっかみから、卑怯な行動をする。

映画の中でも「また大久保連赤の亡霊が出るかも。」みたいな台詞が出て来ます。最後の方まで見れば「こんな意味の事かな」って、わかるんだけど、最初から何回も出て来るこの言葉。これがわからないと「?」となって、考えてしまう。

私、この試写会に友達3人と行きました。原作を読んでいたのは私だけ。前日も会った友達には「大久保連赤」についてだけ説明しておきました。映画が終わった時に、隣に座った友達が、最初に口にした言葉が「『おおくぼれんせき』って・・?」でした。この言葉だけは、テロップ等で説明書きがあった方がよかったのでは?と思いました。

これから観に行く人「大久保連赤」だけは、覚えて行ってください。

それと・・・「降版」という言葉。「降版」とは、新聞の「元になる版」を輪転機で印刷するために渡す・・という事だと思います。この「降版」という言葉も何回も出て来ます。「降版の時限」みたいに。朝、新聞を各家庭にお届けするために、完成した版を輪転機にかける時限があります。その時限をギリギリまで延ばして飛び込んで来るかもしれないscoopを待ったりするわけです。



新聞社のフロアは緊張感に満ち満ちていて、怒号が飛び交っているので、聞き取れない言葉がたくさんありました。独特の新聞用語も多いです。驚いた事に、この映画、メインで芝居をしている俳優さんの他の部屋の隅っこにいる人たちも、それぞれに新聞社における自分の役割をきちんと理解して細かい演技をしているのだそうです。堤さんがこの映画の宣伝でテレビに出ていた時に「監督がDVD特典には『提真一がいない(新聞社の他の人たちだけが演技をしている)クライマーズ・ハイ』をつけたいと言っていました。」と仰っていました。それってちょっと楽しみです。

520人もの乗客の命がいっぺんに消えたこの大事故。この事故を知らない年代の人が私の周りにも増えています。そうした人達にもこの事故の事を知ってほしい。また、この事故の事をはっきりと覚えている私達が観ると、やはりずっしりと胸に迫るものがあります。日航機がレーダーから消えた・・・という第一報から、群馬県の山中に落ちたことがわかり、絶望的であると思われた中から生存者がいた!という明るいニュース。自衛隊の人に抱えられてヘリコプターで救出される少女の名前まで覚えているでしょう。目を伏せて事故の事を語る彼女の気持ちを思い涙し、亡くなった方々が墜落間際に書いたメッセージに泣き・・・数週間、日本中がこのニュースばかりでした。

その夏、毎日、新聞をよく読みました。そして、たくさん泣きました。

その新聞は、熱い魂を持って何にでもぶつかって行く、たくさんの人たちの手によって作られたものでした。この映画を観てください。そして原作も必ず読んでください。お願いします。






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コメント

はじめまして、こむぎさん。
昨日クライマーズハイ観に行ってきました。
堤さんや堺さんの出演映画は割と多く観ているのですが、
この作品がすべての面で抜きんでいると断言できるほど。
邦画も捨てたもんじゃないなと実感しました。
クライマーズハイはぜひもう一度観たいと思っています。
こむぎさん。
堤さんがお好きなら「山のあなた」もおすすめですよ。
今日はムービックスデー。
川口まで行き、
ポニョとマジックを観ようと思っています。

Posted by: ゆう at 2008年07月20日 08:05

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