ワーキングマザースタイルインタビュー アーティスト藤田理麻さん




2009年10月06日

インタビュー アーティスト藤田理麻さん

Posted by 桜本梨恵子

最近、『ライフワーク(一生涯をささげる仕事)』と言う言葉をよく耳にしますが、ライフワークに出会えているワーキングマザー(男性も含め)は少ないのではないでしょうか? 私もまだまだ模索中です。
でも、ちょっと考えてみませんか?ライフワークは必ずしも収入の伴う仕事でなければならないということもないはず。ボランティア活動かもしれないし、子育てかもしれないし、家事かも知れないし・・・。
ひょっとしたらライフワークというものを見つけられずに一生を終えるのかもしれない。
それでも良いのかも? ライフワークを見つけ、それをまっとうできる生き方も格好よく素敵で、あこがれたけれど、今は凡人であることを嬉しく思えるようになりました。
それはこのインタビューがきっかけです。

今日はNY在住で日米にまたがり活躍されている、アーティストで平和活動家でもある藤田理麻さんにインタビューをさせていただいたので、皆さんにご紹介させていただきますね。


藤田理麻 氏
東京生まれ、兵庫県芦屋市で育つ。1979年よりニューヨーク在住。
パーソンズ・スクール・オブ・デザイン学士号(BFA)取得。
TV「ワーズワースの庭」・雑誌FRAUなどのイラストでもおなじみのアーティスト。
2001年、恵まれない国々の孤児や子供達に絵本を創り、贈る機関「ブックス・フォー・チルドレン(BFC)」を設立。個展活動に平行してチベット難民孤児達の教育支援活動を勢力的に展開。BFCのプロジェクトの絵本第一弾「ワンダートーク」は、国連より推薦図書として正式選定。


rima_photo.jpg*******インタビュースタート*********

- 理麻さんのイラスト(作品)は雑誌やTV、色々なところで目にして知っていましたが、私が理麻さんと出会ったのはチベット孤児の支援を通してですよね。
私にとってアーティストと言うのは、雲上の存在というか、それ以上に遠い存在なんです。
アーティストは努力だけではなく、生まれ持った才能がなければなれないとずっと思っているんです。そのような才能が微塵もない私にとっては、そう言う非凡な才能を持って生まれた人がいるだけでも『凄い!』って思ってしまうのです。羨ましいというような羨望は通り越して、ただただ、『凄い!』って。そして、勝手な先入観なのですが、そんなすばらしい才能を持った人は、生活もそれなりに違いない(普通とは違う)というイメージが先行していて・・・。
でも、理麻さんは違いましたよね。
とても一般の人の感覚も持っているというか・・・。
こういうと失礼かもしれませんが・・・。とても普通。

理麻さんを見ていると、『実るほど頭をたれる稲穂かな』ということわざがいつも脳裏をよぎるんです。
理麻さんのようにアーティストとして成功されている方だったら、もっと偉そうな態度をとってもおかしくないのに・・・。いつも回りに気配りをされていて、謙虚で・・・。
どうすれば、そうなれるんですか?

理麻:そんなに褒めていただくと恥ずかしく困ってしまいますが、アメリカ的に、まず褒めていただいたらお礼を言わせていただくことにしますネ(笑)。
自分としては、そのような気持ちは全く無く、「成功している」なんて想いもこれっぽっちもなくて、むしろ自分の力不足などにフラストレーションを感じる毎日です。
私はかなり若い時に、自分は天才でないことを認めざるを得なかったので(笑)、凡人には「努力」と「謙虚さ」が大切だと思ってきました。また20代前半の時に、マーシャルアートの恩師が、「人間は成功するにつれて腰が低くならなければならない。成功すればする程、他人にひけらかす必要もなくなるはずだ」とおっしゃっいました。
「謙虚さ」とは、その人の自信から来るものだと思うのです。そして、自信は、「努力」から来るものではないか、と思っています。
私が最も敬愛するダライラマ法王が、その「生きたお手本」のような方です。ノーベル平和賞を受賞し、50年間以上も非暴力主義を貫きながら、祖国チベットのために努力を惜しまず活動なさっています。世界中から(中国は除いて)尊敬され愛されている人物です。それなのに、彼は、どの国に行っても、会う人すべて平等に接するんです。相手が有名でも無名でも、お金持ちでも貧乏でも、態度が全く変わりません。誰に対してもフレンドリーで謙虚です。これは、私が実際に、何度も自分の目で見た体験からお話をしています。

ですので、私は、「謙虚であること」が、とても大切だと感じています。それは、内なる自信から成り立つものであると同時に、相手への尊敬心や思い遣りの心が必要とされるからです。
ですので、謙虚であることは、私の「目標」であり、まだまだこれから頑張らないと、、、!と感じています。


- まさにことわざどおりですね。
私も、少しでも実って頭がたれるような女性になりたいです。

ところで、よく人生に転機があると言いますが、理麻さんにとって転機と言うものはありましたか?
もし、あればいつですか?


理麻:大きな転機は1993年でした。この年に、2つの象徴的な体験をして、人生ががらりと変わりました。
それまでは、絵で成功してお金持ちになり有名になりたいと、ただ漠然と思っていました。「成功」の意味もよく分からないまま、ただ、なんとなく、そう思って頑張っていたのです。恵まれた環境にあり、まわりがうらやむようなスタートを切ったにも関わらず、心は空っぽで、幸せでありませんでした。
それが、あるきっかけがもとで、「絵は道具にすぎない」と気づいたのです。絵で成功してリッチになることがゴールだったのが、絵はただの道具であって、本当の目的は、社会に貢献することだと、自分の中でゴールがシフトされました。


- すごい!そう言ういう風にマインドシフトをした人が増えると、社会も変わっていくでしょうね。
ついつい、人間、利己的になってしまいますもんね。

理麻さんは夢で見たことを絵にされるってよく言われていますが、これは昔からですか?

理麻:美大時代や、1993年までは、「アウター」(外部のもの)ばかりを描いていました。子供の頃から人に見えないものが見えることがあったのですが、それは「良くないこと」と思い込んでいて、押し殺していたんです。その内なるビジョンこそが、絵にするべきことなのに。
1993年の転機以降は、夢やふっと見えるビジョンのみを絵にするようになりました。

- チベットの孤児を支援するきっかけになったのも『夢のお告げ』との事ですが・・・。

理麻:そうです。1993年のある晩、夢の中で「チベットのために何かしなさい」というお告げの声を聞きました。あまりにも命令的なお告げだったので、無視するわけに行かず、、、(笑)。それまでチベットのことなど何も知らなかった私は、リサーチをして、初めてチベットの悲惨な状況やダライラマの勢力的な平和活動について知ったのです。

home_img01.jpg- 理麻さんが立ち上げられた、Books for Childrenの活動って、とても素晴らしいと感心しています。『チベットにまつわるお話をチベットの言葉で書かれた絵本にして贈る。』
チベットの子供達にとって、これは、お金では買えない財産ですよね。
この発想はどうやって思いつかれたのですか?


理麻:「チベットのために何かしなさい」という声を聞いてから、それまで一度も会ったことなかったチベット人と偶然に(必然的かも)出会うようになって行きました。チベットのために何をしたら良いか分からない日が続いていたある日、仲良くなったチベタン(チベット人)の友人が、「僕が育ったインドの難民キャンプには、本もノートも鉛筆も何もなかった。食べ物もなくて、いつもお腹が空いていて食べることばっかり考えていた」と呟いたんです。
その時、「あ!そうだ!」と閃きました。「私は画家だから、絵も書ける。文章もかける。それなら絵本なら作れるぞ!」と。せっかく作るのなら、消えつつあるチベット民話を絵本にして、チベット難民孤児たちが、チベット語を忘れないように、チベット語で印刷しよう。そして、世界中の子供たちにもチベットを知ってもらえるように、英語でも印刷して、絵本を贈ろう!と決心したのです。これが全ての始まりでした。

- 今はワンダートーク・ワンダーガーデン・TB Awareの3種類ですが、次の作品の予定はあるのですか?
また、Books for childrenの今後の展望を教えてください。

理麻:次の絵本は、ヒマラヤを舞台にした環境問題(地球温暖化など)をテーマにしたものを考えています。子供にも分かり易くするために、絶滅危機に瀕しているチベットのスノーレパードやチベタンレイヨウなどを主人公にします。
BFC(books for children)の目標は、今後も、良い絵本を創り、チベット難民孤児たちに贈り続けることです。個人的な目標は、私が死ぬ前に、きちんとしたファウンデーション(財団)としての基盤をつくり、私がいなくても誰かが運営して行ける環境をつくること、です。


- 理麻さんなら、確実にそれを形にされるんだと確信できます。
私たちも応援していますので、がんばってくださいね。

私はチベットに自ら赴いたことがないので、映像や理麻さんの話からだけでしか、チベットの現状を知りませんが、チベットの子供達が親元を離れ、命がけでヒマラヤを超え亡命していく事実を知り、「もし、あの子がわが子だったら」と思うと本当にやるせない気持ちになります。
私はついつい、母親目線で考えてしまうので、あの子達を哀れむのではなく、あの子達が幸せになれるように、私にできることがあれば手助けをしたいといつも思っています。
上手く言えませんが、『子供がひとり立ちできるように手助けする』と言うか、そんな感じの感覚です。哀れんで与え続けると、依存が生まれるような気がして・・・。やっていることは仮に同じだったとしても、意図が違うというか・・・。
彼らの力を信じて、彼らがひとり立ちできるように、私にできることがあるのであれば、させてもらいたいと思っているんです。でも、凡人の私には何ができるのか?
いつも自問自答の毎日です。私のように考えている人は沢山います。でも、なかなか最初の一歩が出せない。そんな人たちに何かアドバイスがあれば教えてください。

理麻:私はいつも何かする時に、マザーテレサを思い出します。彼女は私にとって最高のインスピレーション。彼女は天才でもなんでもない、ごく普通のシスターでしたね。小さな努力をコツコツコツコツと続けてきた、生きたお手本だと思います。彼女が残した名言は多数にありますが、その中でも特に、この言葉に勇気づけられました。
「小さなことを続けることが大切なのです。私は一日に一人を助けることを続けた。」
この世のほとんどが、凡人です。でも、私が敬愛する人々は、凡人だったから、あんな凄い人たちになっていったと思うのですよ。「情熱」と「信念」と「努力」。

この3つがあれば、必ず、必ず、行動を起こすことができる。小さな規模でも続ければ大きくなっていく。これが、マザーから学んだ、私の永遠のモットーです!
美大生の頃、自分が天才でないことを、とても悔しく思ったことがありました。今日では、むしろ凡人であった自分を嬉しく感じています。


- なんだか、このコメントを聞いて、私も超凡人である自分でよかったって思えます。
ありがとうございます♪
子育てと一緒ですね。日々の積み重ね。小さなことを続ける意義や大切さを改めて気づかされた気がします。息子には『コツコツと・・・』と言っているのに、ついつい自分に対しては・・・。
成果が出ないことへの苛立ちや、無力感を理由に小さな努力を怠ることが多い毎日です。(反省)
1日に1回優しい言葉をかけるだけでも、1年で365回。ホント、凄い!

いつも理麻さんの個展のタイトルが私の心に響きます。
今年はHappinessということですが、理麻さんにとってのHappinessって何ですか?
どんな時ですか?


理麻:私もわからないのですよ!私も未だに「しあわせ」とは何なのかが、わからないのです。小さな幸せはいっぱい知っている。美味しいものを食べたり、気の合う友人と笑ったり。愛する人と時間を過したり、買い物したり。
でも、真の幸せというものは、内なるものであって、自分でしか育てられないのですよね。他人に自分を幸せにしてもらうことはできない。自分でしかできないのです。
では、どうしたら良いのか?
これも、長年追求していますが、、、、笑。

今の私にとって、幸せを感じる一瞬というのは、
「何も求めてなくて、その時の状況に満足している時」です。
でも、そのような瞬間というのは、一分くらいの命ですが。笑
つまり、欲望や執着心が無い状態。そんな「自由」な身になれたら素晴らしいと思います。


- まさに悟りですね。

でも、小さな幸せも日々の中では大切なものですよね。
特に子供達には、小さな幸せを沢山感じて欲しい。(と、言いつつ我が子にはいつも叱ってばかりですが・・・汗)

私に理麻さんを形容する表現力がもっとあればいいのですが・・・。ごめんなさい。
上手く表現できないのですが、理麻さんってたんぽぽみたい。
とても可愛い花を咲かせるけれど、とても強く、そして、優しくフワフワッと綿毛を飛ばす。
理麻さんの絵や活動を通して、小さな幸せの種をフワフワッと、色々なところに飛ばしている。
そんな感じがします。
これからも、アーティストとして、そして平和活動家として、もっともっと小さな幸せの綿毛をたくさん飛ばしてくださいね。

理麻:いつも暖かい応援をありがとうございます!
心から嬉しく思います。これからも見守ってくださいね!

***

理麻さんには独特のオーラというか、人を包む込むような優しさがあって、誰に対しても気さくで、明るくて、美しくて、おしゃれで・・・彼女を形容する言葉は数知れず、というような女性。でも、とっても普通の感覚の人。お話させていただくと、いつも元気が沸いてくる! いつも学ばせていただく、尊敬する女性です。
今回のインタビューを通して、理麻さんの魅力の秘密が少し垣間見れたような気がします。

すべてはコツコツとした努力の積み重ね。
生まれて初めて、(超)凡人である自分を嬉しく思えました。
1歩でも近づけるように私もコツコツとがんばろう!

藤田理麻さんが東京で個展をされます。 いつも引き込まれる理麻ワールド。 是非、皆さん足を運んで、一時のHappinessを味わってくださいね。 もちろん、お子さんも大歓迎だそうです。

秋の新作展『Happiness〜しあわせ〜』

秋の新作展『Happiness〜しあわせ〜』が、
2009年10月28日(水)〜11月3日(火)の期間中、
新宿伊勢丹アートギャラリーにて開催されます。

オープニングパーティ:
2009年10月28日(水)午後5時から7時まで、会場にて。
☆10月31日(土)ギャラリートーク&サイン会 2時〜4時
☆11月01日(日)サイン会 2時〜3時
最終日11月3日(火)は、午後6時に終了です。
新作をどうぞお楽しみに!






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コメント

以前仕事で理麻さんにお世話になったことがあります。
(NYのチベット料理、おいしかったですね!)
梨恵子さんがおっしゃるとおり、すごい方なのに垣根を感じさせなくて、そして本当に美しい方ですよね。インタビュー、ありがとうございました。

何もしなくても入ってくる情報があふれている一方で、知ろうとしなければ知ることのない情報があります。残念ながら、チベットのことは後者です。このインタビューや、理麻さんのアートに触れることで、多くの人がチベットを「知る」きっかけになればいいなと思っています。

Posted by: カトウヒロコ at 2009年10月13日 06:43

カトウヒロコさま

コメントありがとうございます。
カトウさんがおっしゃるように、情報がこれだけある中で、知ろうとしなければ知ることのできないことって沢山ありますよね。
チベットのこともしかり。また、チベット以外にも沢山・・・。

そう言う情報と言うものの多くは心が痛くなることばかりで・・・。できれば知らずにすごしたいことばかりだったりしますよね。
だって、仮に知っても私に何ができるの?って感じですしね。
でも、今回のインタビューで、私自身も大きな気づきを頂いたんです。
理麻さんがおっしゃっていた、マザーテレサの言葉の引用 「小さなことを続けることが大切なのです。私は一日に一人を助けることを続けた。」
これには、改めて胸を打たれました。

そして今回のインタビューでも分かるように、理麻さんの人としての美しさ。
その背景には「計り知れない努力」があるのだと思います。
私なんかは足元にも及びませんが、
でも、少しでもいいので理麻さんの様に「人として美しく」ありたいものだと思います。
努力ですね♪

Posted by: Rieko at 2009年10月13日 13:23

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