非常に不幸な事件が起きました。
フローレンスの駒崎弘樹さんが、非常に素晴らしい俯瞰し、かつ当事者意識をもたれた、文章を発表しています。この文章が沢山の方に読んでいただければいいなと思います。
http://www.komazaki.net/activity/2014/03/004462.html
ワーキングマザースタイルのスタッフの中でも非常に大きな議論になりました。まずは事件の前提です。
■男児死亡事件で注目、「ベビーシッター」紹介サイト なぜ母親たちは利用せざるをえないのか
http://www.j-cast.com/2014/03/18199563.html
■同じベビーシッター 「以前もあざ」 違う登録名気付かず
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014031902000119.html
この事件について、スタッフがどのように感じたかを、Facebookのスタッフ限定グループからコピペします。
最初ニュースを聞いた時は素人の男の人がいいかげんな気持ちでやっているのかと思いましたが、後の報道をみたら、男の人は子供好きで保育園勤務経験もあって、英国の保育資格の勉強をしていたそうですね。チャイルドマインダーのことかなと思うのですが。
私もチャイルドマインダーに預けたことは数えきれないほどあります。
ベビーシッターの人に預けたことも数えきれないほどですが、正直、日本で初めてベビーシッター派遣を始めた、みたいな由緒正しい?!ところの方でも、時間守られなくて困ったり、違うところから来てくれたシッターさんも子供が言い出さなかったからという理由でお昼食べさせてなかったりとか高いお金出したから安全です、良い保育でした、ってわけでもなかったという、、。
ベビーシッターは密室だから保育の質が担保されない。それは高くても安くても一緒だと感じています。
もちろん感動するほどすばらしい保育をしてくれて子供が泣いて帰らないで!とせがむ人もいました。
なんでも規制するのもどうかと思いますが、悲劇を少なくしようと思ったら、利用者がいつでも保育の様子を動画で見られるような仕組みが必要なのかなと思います。
シングルマザーで保育園に預けられる時間でない時に仕事があって、ベビーシッター派遣会社に相談すればきっと自分の時給がふっとんでしまうような額をシッターに払わなくてはいけない、という時に、マッチングサイトは魅力的であったのだと思います。
会社を通してシッターを頼めば9時〜17時でも1500円以上、深夜などになれば2000円〜3000円以上の時給を払わなくてはなりません。
シッターの時給が800円〜1200円くらいであろうことはシッターの募集広告を見ればわかります。
シッターと直接やりとりができれば助かる。というよりその額で頼めないことには生活がなりたたない。
今回、祖母の方は44歳でした。週末はできる限り預かっていたと報道されているので、恐らく彼女も働いているのではないかと思います。
平日は親族に頼ることができないのであれば、誰か預かってくれる先を探すしか仕方がない。
働かなくても十分に食べていける額をシングルマザーに支給するといった支援が現実にはないのだから、預けた人を責めることはできないと思います。
働くママの支援というと企業のサポート制度や保育園の充実に私はつい目がいっていたのですが、本当に支援が必要な人はそれだとこぼれてしまっているのかもしれないということに今回気がつきました。
上に引用した駒崎弘樹さんのブログで提案されていたように、「ルールに基づき、ベビーシッター利用者に補助をする」ということが一番必要ではないかと思います。
特にひとりで子供を育てている親や経済的に苦しい人が利用しやすいかたちに制度化することを考えられたらと思うのです。
イレギュラーなところは支援しにくいのかもしれないけれど、そここそが一番支援を必要としているように思えます。
私も最初の出産は20代で(と言っても29ですが)周囲に誰一人出産経験者も働くママもいなかったので、情報収集や情報源は100%ネットでした。
そこに「保育士」と書かれていたら、全く疑わなかったと思います。
ネットで安いシッターを探した事はもちろん、今回は偽名を使っての詐欺の様な状況だったため、全く責める事は出来ません。(私はまだ責めている記事は見ていませんが、かなりあるのでしょうか?)
今回の件で規制は厳しくなり、破格かつ資格がないシッターは淘汰されていくでしょう。
私が依頼していた、当時厚生省で運営していたシッター紹介は時給800円〜で民間のシッターの半額近くでしたが、今回の「月額8千円」から見たら、どうにもならない程の高額ですよね…。
風俗産業がシングルマザーの受け皿になっている、という報道が話題になりましたが(今回の方の職業とは一切関係ありません)、そういう方々はもし金銭的に問題が無かったとしても時間的に民間の保育園やシッターさんではまかなえないでしょうし、一体どうしたら良いのでしょうか…。
何も提言は出来ませんが、何でもネットで探す私が同じ立場になる可能性は十分あった訳で、とてもショックを受けています。
近々シングルマザーになる予定の身としては見過ごすことのできない事件でした。核家族化が進み、預けざるを得ない人は確実にいます。シングルマザーが皆好き好んでシングルマザーになっているわけでもなく、保育園の時間内の仕事に皆がつけるわけでもありません。わがままと言われようとも、働いて生きていかねばなりません。少子化対策としても、子育て支援のセーフティネットは広げて欲しいと切に思います。
私の考えることは、フローレンスの駒崎代表とほぼ同じです。
ただ、もう少し突っ込んだことを書いてみたいと思います。
シングルマザーが乳児二人を抱えて働きながら生活する。
育児もして、家事もして、仕事もする。
正直言って、これは無理なことだと思うんです。
彼女は、生活保護を受けて良かった。受ける権利がある。
でも、受けなかった。
それは何故なのか。制度はあるのに、条件も恐らく整っていたのに、彼女はその選択をしなかった。
子どもが小さい間だけでも、行政の保護を受けていれば、今回のように急な夜勤に振り回されることも無く、安心して我が子の側に居てあげることができたはずです。
でも、彼女はそうしなかった。
今回の事件は、そこを、考えなければならないのではないかと思います。
これは、貧困問題です。
母親の責任や個人の育児論に矮小化してはいけない。
今回の事件は、構造的な貧困問題だという指摘は、すでに多くされていると思います。
これをきっかけに、シッターサイトやベビーシッッティングを規制するのではなく、子どもを持つシングルマザーが急な夜勤のある仕事につかなくても、安心して暮らせる環境にいられる状態を行政が作るべきだと。
私は思います。
みんな、もっと積極的に生活保護を受ければよいと。
そんなことをしたら、社会福祉費が膨らんで、国庫が破綻するじゃないか、と批判をされるかもしれません。
しかし、それくらいのインパクトを持って行動しなければ、国は動かないでしょう。
私は義父母と同居なのでシッターに預けた経験がないので、基本的な料金や、「普通は家に来てもらう」等、全く知らないので、ためになる事は言えないし、本質からズレているかもしれません。でも、書きます。ズレすぎていたら削除してください。
今回の事は、最初の報道では「母親は預けた人の名字とメルアドしか知らなかった」という事で確かにえーっ!と思いました。私だったら住所は聞いておきたいと思いました。何かあった時(何かなくても)「ここに子どもがいる」という場所は知っておきたい。有事の時、警察や知り合いに「ここに行ってみて!」と言えるように。自分が駆けつける事が出来るように。
このお母さんは、犯人と以前トラブルがあり、その人を避けていたが、偽名を使っていたのでわからなかった等の報道がありました。
それを受けて、以前、この人に預けた事がある人をテレビ局が探し出してインタビューをしていました。あかちゃんが戻って来た時に傷がたくさんあったという人もいたし、時間を守らなくて困るという人もいました。
こういうサイトを利用せざるを得ない人がたくさんいる。(自分の時給より、保育料が高かったら子どもを預けて働く意味がないし)
いろんな規制をするのも必要かもしれませんが、とにかく「安価で預けたい人がいる」「安くても預かりたい人がいる」というのなら、預けた人が必ずレビューするっていうのはどうでしょう。義務化する。「預けてよかったかどうか?1.はい2.いいえ3.その他言いたいこと」のように。文章が苦手でも、忙しい人でも必ず感想を投稿する。もちろん長文でもOK。
それと預かる方の人は顔写真を公開。(会員制サイトで会員は顔を見る事が出来る)場合によっては住所・電話番号も公開。大切な子どもを預けるのだから、きちんと知っておきたい。それを渋る人はちょっと心配な人じゃないですか。サイトに早急にお願いしたいのはその本人確認などの部分。
くだらない事のように思えるかもですが、今回のように、報道を見て「あの人だ!」と気づく人がいる。
そういう方達が、預けたあとに、義務として「よくなかった」とレビューしていれば危ない自体を多少は防げるかもしれません。
もちろん逆に「すごくよくやってくださって助かりました。」「次もこの方に頼みたい。」「子どもがとても喜んでいました」等、良い感想が増えれば励みにもなるし、質もよくなるんじゃないかな。
少し前に、「開かずの踏切」を高架にして、その下に出来たスペースを保育施設に・・という試みのニュースか報道されていました。箱ばかり作っても保育士さんの数が足りないと結局はそこに行き着き、安藤ゆうこさんが「定年を迎えて暇がある子ども好きな『育爺(いくじい)』とかどうですかね」って言ってた。私はやだけどね〜。
今回の事件でお恥ずかしながら、はじめてネット上のベビーシッター紹介サービスがあることを知りました。そしてそれを利用せざるを得ない方がいらっしゃることも。
今回のことを母親の無責任さとか、容疑者の罪など個人的なことを責め立てて終わって欲しくない一人です。
ワーキングプアの問題が現実にあり、それでもなんとか子供を育てている現実があるのです。
経済的に余裕がなければ、あるいは環境的に余地がなければ子供を産んだり育てたりしてはならない…という社会にしてはならないと思っています。
そうなると個人的にサポートする気持ちを各自がもつとともに、やはり政治で解決していくしかないと思います。
今回の事件が子供を産むこと育てる気持ちにブレーキをかけることがないよう祈るばかりです。
子供を置いて働きに行かないと、子供を育てられない人たちがたくさんいることを、子供を育てるために、働きに行く人達がたくさんいることを、そんなアタリマエのことを、なぜかわからない人たちがたくさんいます。そして、私達もつい忘れがち。
今、育児をする女性たちが歩む道路は渋滞しています。経済的に恵まれ、有料道路を選べる人。正社員の座を確保し、公立の保育園に預けやすい人。時間が不規則、仕事が不安定で、毎日が綱渡りな人。いろんなレイヤーの人が、いろいろな事情で、毎日自分の持つ精一杯の武器を手に、戦っています。
すべての「お母さん」が、望むサービスを受けられるように、というのには非常に時間とコストがかかります。でも、本当に助けて欲しい人が、もっと気軽に「助けて」を言えるような、社会にするために、私が何をできるのか。それが問いかけられた事件だと思います。どうか、どのレイヤーのお母さんたちも、自分ゴトとしてこの事件を受け止めていただけますように。