原作は私の大好きな「風が強く吹いている」を書いている三浦しをんさん。
ここには一作目の「まほろ駅前多田便利軒」のレビューを書いていなかったのでリンクしておきます。
私の中で、この二人はグレーで華のない人のイメージだったので、映画化される、しかもキャストは瑛太と松田龍平と聞いた時、絶対に違うんだけど〜!!と思いました。
でも、今ではもう多田と行天はこの二人以外にあり得ない!!とまで思えます。それほどのはまり役。
まほろ市で便利屋を営む多田啓介(瑛太)のところへ、中学時代の同級生・行天春彦(松田龍平)が転がり込んで3年目。行天と凪子(本上まなみ)の娘はる(岩崎未来)を預かって四苦八苦する中、まほろ市の裏組織の人間である星(高良健吾)から、駅前で毎日のようにビラ配りをする怪しい団体「家庭と健康食品協会」の調査を依頼される。やがて、その協会は以前新興宗教団体だったことがわかり、代表の小林(永瀬正敏)が行天の過去を知る人物だと判明する。さらに調べを進める多田たちだが、思わぬ形でバスジャック事件に巻き込まれていく。シネマトゥデイ
今回もまた、不器用できちんと生きられない男二人が、自分たちなりに「わりとまじめに」自分たち基準で「わりと一生懸命」に日々をこなしている物語。
映画のフライヤーに迷彩服を着た二人が映っていたので「えっ?まさか便利屋戦争に行く??」と思いましたが、実は戦争ではありませんでした。この迷彩服を着た意味がちょっと笑えます。映画館で確認してみてくださいね。
今回もいろいろな依頼を受ける多田便利軒ですが、メインは行天の娘(精子提供)のはるちゃんを、アメリカ出張に行く凪子さん(本上まなみ)から一ヶ月半預かるという依頼。実際問題としていくら他に預けるところがなかったからとはいえ、私だったらこの二人には絶対に預けない。不安しかないよ。
まず最初の時点で「このふたりにだけは預けないでしょー」というところでひっかかってしまうと映画に集中出来ないので、そこはさらっと流してください(笑)
自分の子どもをあかちゃんの時に亡くしてしまった多田と、子どもの頃のトラウマもあり子どもが大の苦手の行天が女の子を預かる。それはそれは一大事です。実生活では二人の子どもを持つ瑛太さんはきっと子どもの扱いに慣れているはずですが、映画では「ママに会いたい〜」と泣くはるちゃんをそっと抱きしめるシーンのやわらかくてこわれそうな綿菓子で出来たお人形に触れるようなこわごわとした手つきが絶妙に上手でした。
世の中の「普通」や「常識」とは微妙にかけ離れ、ふらふらと生活しているように見えるふたり。でもなぜかあたたかくてやさしい。それをおおっぴらに見せる事はないので、たぶん他人からは眉をひそめられるようなやつら。でもね、汚い事務所で最低限の暮らしをしていても「誰かのためになること」を引きうけて一生懸命にこなしている。多田と行天は決して下品にならずジェントルマンだと思います。
「探偵物語」の中で工藤ちゃんがタバコを吸う時、ライターの火が30僂らいにぼわっと大きく着くんですが、この「まほろ駅前狂想曲」の中に何度もそのシーンが出て来ます。これは絶対に「探偵物語」へのオマージュだと思いました。ちなみにこの映画、ひとりで観に行ったのですが、「探偵物語」が大好きでDVD-BOXも持っている夫にも観せたくて後日一緒に観に行きました。「探偵物語のワンシーンってわかって観てる人何人いるかな??」と、ふたりでちょっとワクワクしました。
ちなみにこの映画には濱マイクな永瀬正敏さんも出ていますよ。
でも!!今回の「狂想曲」の中で、また中年太りを見せていますのでそのシーンを探してみてくださいね。
今、このふたりは、日本の「中堅(←年齢という意味で)俳優」の双頭とも言えると思います。ギラギラしたところがなく、いつでも飄々としていて、熱いというよりもぬるま湯的な感じ。番宣のためにバラエティに出てもハキハキと宣伝出来るタイプではない。しかしその演技は本当に上手。演技以外のところには無頓着、演技以外のところでは不器用かもしれないけれど。
多田と行天、これからもずっとずっとシリーズで続いて行ってほしいです。お願いします。三浦しをんさん。