ワーキングマザースタイル【シネマ・こむぎスタイル】第73回 滝を見にいく




2015年03月14日

【シネマ・こむぎスタイル】第73回 滝を見にいく

Posted by 湯河原こむぎ

滝を見にいく」という小さな映画があります。「7人のおばちゃんが滝を見にいくバスツアーに参加するが山で道に迷う話」です。ただそれだけの話です。友達にそう話すと「監督誰?」と聞かれます。

監督は沖田修一監督。「南極料理人」や「キツツキと雨」などの映画を作っている有名な監督です。

沖田監督は「ただただ、自分が『おもしろそうだな』と考えて出来た作品です。」とパンフに書いています。

この映画を知ったきっかけは、「40歳以上の女性、経験問わず」というオーディションで選ばれたプロ・素人のおばちゃん7人が出ている映画・・・と紹介されていたテレビ。7人のおばちゃんの中には、この映画のロケハンに協力した妙高氏の地域サポートの人や、高校生の頃女優を夢見ていたが周囲の大人の反対で断念した79歳の方までいろいろな方がいます。それを聞いただけで「絶対に観よう!」とワクワクしました。

DSC_1230.jpg

ストーリーは簡単です。

「幻の滝を見て、そのあと温泉に泊まる」という30000円のバスツアーに参加したおばちゃん7人。今回がツアガイドデビューという頼りない菅(演じている黒田大輔さんは38歳の俳優さん)のあとについて山道を歩き幻の滝をめざします。道に迷った菅が「ここにいてくださいね。僕ちょっと見て来ます。」と言い残してその場を立ち去った後、待てど暮らせど戻らず。携帯も繋がらない。

残されたおばちゃん達は「その場に残るもの」「菅を探すもの」に別れて捜索するが、菅も滝も見つからない。さて困った、今晩は野宿するしかない・・・というもの。

まあ、つっこみどころはいろいろあります。山に詳しくない私が見ても、そんなに険しい山にも見えないし、そんなに高くも見えないし、それほど人里離れてるとも思えない。紅葉がとても美しい季節、ましてや「幻の滝」があるのであれば、他に観光客がたくさんいるはず。誰にも会わないって事はありえない。そうそう、それに、ここまで乗せて来てくださったバスの運転手さんだって、暗くなっても誰も戻って来ていない事態だったら警察などに連絡するでしょ。

・・・まあ、それは今回は目をつぶってください。

「おばちゃん7人が山で道に迷っちゃった」んです。さて、どうしよう!?そういう映画。

ただ、それだけなのにおもしろくてたまらない。まず、まよっていない時からめちゃめちゃおもしろい。

バスの中の会話だってほんとおっかしい。山を歩いている時の会話だってなんでもないのにおかしくておかしくて。そうですねえ、40歳以上の女性だったら思わず「ぷっ(笑)」と笑ってしまう『おばさんあるある』がいっぱい詰まってる。

ツアーガイドは見つからない、滝もどこにあるかわからない、道にも迷ってしまった。・・・ってなった時、あなただったらどうしますか?私だったらどうするかな・・・とスクリーンの中のおばちゃんをじっと観る。

私はポンチョを着たスナフキンみたいな「セッキー」に似てるなって思いました。一緒に映画を観に行った友達のよりりんは「クミ」かも。会社の●さんはクワマンみたい。いつもお菓子大好きな○さんはスミスみたい・・・と考えていたら楽しくなった。緊急事態になった時、怒鳴り散らす人もいるよね。でも、その事態自体を「困った」と思いながらも楽しんじゃう人もいる。どっちが楽しいかといったら、それはもう。ねえ?

とにかく、この7人のおばちゃん達が言い合い、ケンカして、泣いたり、ののしったり、遊んだり、怖がったり、歌ったり、協力したりしながらこの危機を乗り越える映画です。きっとおじちゃん7人だったらそんなに楽しくないかもしれない。


この映画を観ている時に、ふと「人生、いろどり」という映画の事を思い出しました。この映画、「シネマこむぎスタイル」に載せようと途中まで記事を書き上げていたのですが、まだ未完成。その未完成な記事の中の一文をここで引用させてください。

過疎と高齢化の農村で、ひっそりと暮らしている農民たち。ある日農協の職員の江田(平岡祐太)が、お店で食事している時、冷奴にのっている楓を「きれい〜」と大切そうにハンカチに包んで持ち帰る若い女性客を見かけ「葉っぱビジネス」を思いつく。

いつも野菜が売れ残って苦労している農家のおばあちゃん2人と手さぐりで「葉っぱビジネス」を始めます。

そのおばあちゃん二人は幼なじみのかおるちゃん(吉行和子さん)と、はなえちゃん(富司純子さん)。その後、都会から帰ってきたみっちゃん(中尾ミエさん)をまじえ三人で頑張ります。

この映画を見て一番おもしろかったのは、女性はいつまで経っても女の子のままなんだなーということ。もちろん容姿は衰えて周りから見たらおばあちゃんそのものなんですが「もう、はなえちゃん、いつもそうなんだから!!」みたいな。文字にしたら小学生の頃と変わらないわきゃわきゃっとした会話。人生の楽しい事もつらい事も経験してなお女の子でいられる不思議。
「人生、いろどり」ではおばあちゃんになっても少女である三人を名女優、吉行和子さん・富司純子さん・中尾ミエさんが演じていました。その三人の空気感を、このプロ・アマ混合の滝を見に行った7人のおばちゃん達にも感じました。

どんな事態に直面しても、男の人ほど真剣になりすぎず、知らないおばちゃん同士話し合って、知恵を出し合い、あぶなっかしいけど、わりとたくましく乗り越えられるんじゃないかなーってちょっと前向きになれる映画でした。

おばちゃんたちが縄とびするシーン。6番目に入るのは自分!って気がして、スクリーンのこちらがわで入るタイミングをはかってしまう私。スクリーンの中に自分がいないのが不思議なくらいの一体感でした。

誰が観てもおもしろいか・・・と聞かれれば、男性や若い人が観たら「どこがおもしろいの?」って思っちゃうかもしれません。でも、あなたが30歳を超えた女性ならきっと楽しめるはず。高校の時の友達と観に行った私たちは、「おもしろかったね〜!」と言いながら「出かける時には何が必要か」を話しあいながら帰って来ました。

「チョコレートとか食料を持とうよ。」
「ウィダーインとかだと人にわけてあげられないから、やっぱカロリーメイトかなー。」
「それと『きのこ図鑑』ね」
「あとビニールシート」
「フードつきの服がいいよね、絶対」

おばちゃん二人だから帰り道も映画の話で盛り上がりました。皆様もぜひぜひ!!



「滝を見にいく」公式ページはこちらから。
公式ページでぜひ予告編をご覧になってください。
これを観たら絶対に観たくなりますよ。

上映館がとても少なくて、私も新幹線に乗って静岡まで観に行きました。
2015.6.10にブルーレイ・DVDの発売も決まっているのでレンタルになってからでも。


【シネマ・こむぎスタイル】番外編 新幹線に乗って「滝を見にいく」を観に行く・・・もご覧ください。






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