ワーキングマザースタイル【シネマ・こむぎスタイル】第76回 「あん」 




2015年06月27日

【シネマ・こむぎスタイル】第76回 「あん」 

Posted by 湯河原こむぎ

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「風に立つライオン」を観に行った時にやっていた予告編。「駆込み女と駆出し男」「あん」「海街diary」の三つ全部に樹木希林さんが出ていました。片目を失明したとか全身がんだとかご自身の身には大変な事がおこっているだろうに次々と映画に出演されています。

上記の映画三つとも観ました。全部とてもよかったですが、特に「あん」が素晴らしい映画で、ぜひぜひ多くの人にごらんいただきたいと思いました。他の二作に比べると地味なだし、上映館も少ないのであまり「観に行こう」と思っている人が少ないのではないかな〜と思いレビューを書くことにしました。

私は一年に映画館で30〜40本の映画を観ます。【シネマ・こむぎスタイル】も76回になりましたがその4倍くらいは観ていると思います。この「あん」という映画は、私がここ10年間で観た映画の中で間違いなく自分の中のベスト10に入る映画だと思いました。

刑務所から出所したのち、どら焼き屋「どら春」の雇われ店長となった千太郎の店に、徳江(樹木希林)という女性がやって来る。その店で働くことを強く希望した徳江を千太郎は採用。徳江が作る粒あんが評判となり、店は大繁盛。そんな中徳江は、つぶれたどら焼きをもらいに来ていた女子中学生のワカナと親しくなる。ところがある日、かつて徳江がハンセン病を患っていたことが近所に知れ渡り……。

「あん」予告編
この予告編の中で浅田美代子さんが「彼女『らい』じゃないかって」って言っているのですが、映画館で予告編を観た時には深く考えなかったのです。これから観る映画はさらな気持ちで観たいので下調べしたり、人のレビューなどは読まずに行くようにしています。なので「『あんこ』を作るのが上手な人の話」・・・ということしか知らずに観に行きました。



原作はドリアン助川さんの小説「あん」だそうです。

細かい事は書きませんが、今でも差別に苦しんでいる方々がいるという事に愕然としました。きっとみんなそんな事に気づきもせずに毎日暮らしていると思います。

しかし、この映画に出て来る樹木さん演ずる徳江さんは、その閉鎖された世界から鳥のように飛び出しました。徳江さんのしぐさや台詞が台本にあるんだかアドリブなんだかよくわからない本当に自然な表情と言葉でした。この映画は東村山市あたりの狭い範囲のお話で美しい四季の風景があふれています。その美しい風景、きらめく木漏れ日や木々のさざめきにいちいち手を振ってほほえみかける徳江さんがほんとうに愛らしいのです。毎日の、人生の、世の中のいろいろなすべてのものに感謝して愛しんでいます。樹木希林さんって素晴らしい役者さんだと思いました。もちろんずっと前から素晴らしいとは思っていましたが、この作品の樹木さんは本当に素晴らしい。

私が樹木希林さんをはっきりと認識したのは、寺内貫太郎一家のおばあちゃん役で壁のポスターに向かって「ジュリー―――っ!!!」って言ってた時(その時は「悠木 千帆」って名前でしたが)。おばあちゃんだと思っていましたが、実はその時は30台前半だったのです。後から知ってとってもびっくりしました。郷ひろみさんと「林檎殺人事件」や「お化けのロックンロール」を歌っていた時もコメディアンのおばあちゃんのイメージでしたね。

樹木さんはご自身で「監督はこれを私の遺作として売りたいんじゃないかな」と制作発表でおっしゃっていました。本当にいい作品。「遺作」にふさわしいかも。でもきっともっともっとずっと元気でいらっしゃると思います。

また、この作品には「わかなちゃん」と言う中学生が出て来ます。見たことない子でしたが、「わかなちゃん」という役のキャラクターにぴったりでした。清楚できちんとしていて美人。そして今のアイドルにありがちなちゃらちゃらしたところが一切ない。この子誰だろ?新人かな?と思ってあとで調べたら樹木さんのお孫さんでした。そう、もっくんの娘さん。そうなんだー!!やっぱりねー。15歳でこの仕上がり。将来が楽しみ。

樹木希林さんと内田伽羅さんの素敵なシーン。
そしてどら焼き屋さんの店主の永瀬正敏さんも渋くて内に秘めた演技が素晴らしいです。年齢も立場も違う、普通の世の中を「生きにくい」三人の物語をぜひご覧ください。


映画館でパンフを買ったらこれ↑でした。あん オフィシャルブック (キネマ旬報ムック)なので本屋さんでも売っているかもしれません。写真もいっぱいで読み物としても満足の行く本でした。樹木さんのインタビューが面白いです(笑)。手触りも優しくてこの映画にぴったりです。

この映画にこのがぴったりです。

素晴らしい映画なのでぜひご覧になっていただきたいです。重いテーマを描いていながら笑えるところもいっぱいで、みんな徳江さんの事が愛おしくてたまらなくなると思います。ぜひぜひ。






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